
男鹿川は五十里ダムをはさんで、その上流側と下流側とで異なる顔を持つ渓流だ。
ダム上流側は、国道沿いではあるが深い山間を流れる山岳渓流。透明度の高い水と滑床の美しい流れが続く。
一方ダム下流側は、有名温泉地の温泉街を流れる里川。川沿いには遊歩道や綺麗なトイレも設置されていて、危険の少ない気軽なフライフィッシングを楽しめる区間だ。
この両区間はあまり離れておらず、車で20分も走れば行き来できる距離。短時間で二つの異なる雰囲気を楽しむことができるフィールドなのだ。
今回の取材は2014年4月後半。しばらく暖かい日が続いていたが、この日はぐっと冷え込んでしまい、時折冷たい雨にも降られてしまった。
5月が盛期の上流域

五十里ダム上流側は、ダムのインレット付近から三依温泉駅付近までの区間がC&R(三依地区C&R)に指定されている。この区間はインレットの延長、本流的な渓相で明るく開けている。
そこからさらに上流域が、男鹿川の核心部。良型のイワナとヤマメが棲息し、ドライフライで軽快に釣り上がるのが楽しい山岳渓流の区間となる。
漁協の話では、ここでも2月の大雪の影響が大きかったようだ。三依地区C&R区間より上流側では、4月12日に渓魚の放流が予定されていたのだが、その頃はまだ残雪が多く、放流は4月27日に延期された。
取材日はその放流前だったので、居着きのイワナ・ヤマメのみを狙うことになる。このエリアは例年、新緑が芽吹きはじめる5月GW頃から年越しの渓魚たちが動き始め、盛期を迎える。取材日はこの区間を楽しむには少し時期が早かったが、この記事が掲載される頃には、このエリアでも渓魚の活性が上がっていることだろう。
案の定、この日ここでは居着きイワナやヤマメは姿を見せてくれなかった。
早期から高活性の下流域ダムの下流側、川治温泉街の中にもC&R区間が設けられている。こちらはニジマスとヤマメが中心で、40センチを超える大型も放流されている区間。
ダム下のゆるい流れで水温が上がりやすく、温泉水も流入している。上流側と違って、解禁当初からライズの見られる人気フィールドだ。
それだけに人も多い。この日も多くのフライマンとルアーマンが区間内を歩いていた。
ここでは釣り上がるスタイルではなく、ライズを探すか、渓魚の姿を見つけて狙うかのサイトフィッシングが効率がいい。魚影は非常に濃いので、見つけることはそう難しくない。
止まらないライズこの日もライズはすぐに見つけることができた。先行者が釣った後だったが気にする必要はないようだ。ライズが止まることはなかった。
さて。何を食っているのだろう。
目視で流下物は確認できない。川面の吹き溜まりを見ると、オオクママダラカゲロウらしきスペントとガガンボが浮いている。
#16。スペントのメイフライパターンを数投キャストしてみるが、渓魚はそれを全く無視して見えない何かにライズを繰り返している。
水面直下か?
フライを#16のフローティングニンフに替えてみる。

今度はフライを見に来るものの捕食行動はせずに帰っていく。それでもキャストを繰り返すと、時々フッキングしてくれる渓魚もいたのだが。
しかし、どうも納得がいかない。もっときちんとマッチするフライパターンがあるはずだ。
カラーが違うのか。サイズが違うのか。
もしかするとメイフライ系ではなく、ミッジ系の何かを食っているのか?
これだからマッチングザハッチのフライフィッシングは楽しい。
さて、フックサイズを小さくしてみるか。ティペットの先に#20のフローティングニンフを結んだ。これならミッジにもマッチするかも知れない。
フライがライズのレーンを流れると、今度は渓魚は疑うことなくすんなりとフライをくわえた。

ストマックは見ていないので、実際に何を捕食していたのかはわからないが、#20のフローティングニンフは当たりだったようだ。このフライは、ヤマメとニジマスをたくさん連れてきてくれた。