大聖寺川へ
市ノ瀬ビジターセンターから大聖寺川の核心部までは、70kmを超えるロングドライブになる。所要時間は2時間ほど。もう少し近場に移動したかったが仕方ない。天候を気にせずに釣りを楽しみたい。
さて、大日山周辺の沢水を集めて流れる大聖寺川は、北陸ではポピュラーなフライフィッシングフィールドのひとつ。九谷ダム上流にかかる生水橋から古九谷橋の先までは明るく開けたヤマメの好ポイントが続いているのだが、木陰が少なく晴れた夏の日中は、こちらの体力がきつい。
この日、ようやく大聖寺川に到着した時にはすっかり日の高い時間になっていた。期待通り天候も良く、強い日差しが川面を照らしている。開けた区間はパスして、車を古九谷橋からさらに上流へ走らせ、深い森の中を流れる山岳渓流のエリアである落合橋の流れを目指した。
核心部はルアー・フライ専用区
今回入渓した落合橋前後の区間は、ルアー・フライ専用区に指定されている。
「ルアー・フライ専用区」というと、開けた下流域に設定されることが多いが、ここ大聖寺川の「ルアー・フライ専用区」は、まさにこの川の核心部といえる豊かな森の中だ。
橋と川との高低差は少なく、橋の脇から簡単に入渓できる。危険も少ない気軽な入渓点だ。もしここが「ルアー・フライ専用区」でなければ、恐らく7月の時点ではかなりの魚が抜かれてしまって、魚影は寂しくなっているのだろうな、などと想像してしまう。
夏の山岳渓流らしくテンポ良く釣り上がってみる。
やはり夏のフライフィッシングは森に囲まれた山岳渓流がいい。
木漏れ日と緑が渓にコントラストをつけて眺めているだけでも心が洗われる気がする。
標高は高くないので気温は高めだが、木陰の中なので体力を奪われることもない。
さてこの区間は、比較的平坦な流れで落差は小さく、水量も多くない。淵などの大場所もあまりない。なるほど、エサ釣りには不向きなのかもしれない。こうした渓相はドライフライで叩いていく釣り方にアドバンテージがある。
小さな落ち込みの周辺、木の枝の下の日陰の流れ、岸寄りのちょっとした深みや巻き返しなど、大きくはないがドライフライ向きのポイントが沢山ある。
そうしたポイントにフライを丁寧にドリフトさせると、かなりの頻度で渓魚が挨拶をしてくれる。やはり魚影は濃いようだ。盛期の山岳渓流らしく活性も高い。
この日(6月後半)の大聖寺川では、まだカディスやメイフライが盛んに飛び交っていた。春のようなまとまった流下があるわけではないが、時折ライズも確認できる。
結んでいたテレストリアルパターンのフライからメイフライ系のCDCソラックスダンに交換すると、とたんにフッキングしてくれる渓魚が増えた。どうやらここの渓魚の食性はまだテレストリアルにシフトしていなかったようだ。この記事が掲載される頃には、この流れも完全にテレストリアルの季節に移行していることだろう。
釣れてくるのは、ヤマメとイワナ。どちらかといえばヤマメが多い。
サイズは、ヤマメのほうは中小型が中心で22~23cmくらいがアベレージ。イワナはグッドサイズが多く、この日も27、8cmクラスがいくつか出てくれた。
うれしいのは、渓魚のコンディションの良さだ。ここ大聖寺川では成魚放流は行われていない。そのため、イワナもヤマメも魚体が非常に美しく、引きもパワフルだ。
特にイワナはこの川で生まれ育った天然魚が多く、そのコンディションは素晴らしい。今回の取材で釣れたイワナの見事なヒレには、しばし見入ってしまった。