今月のフィールド　～2014年9月　胎内川～（動画あり）｜フライフィッシング　データバンク

胎内川。
神秘的で好奇心をくすぐられる名だ。読みは「たいないがわ」。
アイヌ語の「テイ・ナイ」という言葉が語源のようで、意味は「清い川」。昔は「太伊乃川」と表記されていたらしい。
東北や東北に近い新潟県では、アイヌ語を語源とする地名や河川名が見受けられるが、胎内川もそのひとつのようだ。

飯豊山地を水源とする胎内川
胎内川は、飯豊山地の藤十郎山周辺を水源としている。
飯豊山地の渓流といえば、三面川、加治川、荒川など、素晴らしいフライフィッシングフィールドをいくつも思い出すことができる。しかし、その源流域はいずれも険しく、気軽に立ち入ることはできない。
実はここ胎内川の源流部も険谷として知られ、そこは本格派の源流釣り師や沢登りの人達の世界だ。そのエリアに入渓するとなれば本格装備が必要で、行く先にはゴルジュや深い淵が待ち受け、泳ぎやへツリを繰り返してようやく釣りができる。
およそ気軽にフライフィッシングを楽しむ、というような場所ではないのだ。

今回の取材はもちろんその手前。胎内第一ダムの少し上流を流れる気軽な場所だ。源流部への入り口なのだが気軽なイワナの流れである。比較的開けた渓相でフライロッドを気持ちよくキャスティングできる。

入渓は、胎内川に沿って走る舗装道路の終点にある奥胎内ヒュッテの裏手から。マイカーで通行できるのはここまでだ。
ヒュッテ裏には河原に降りる階段がついているので、苦労なく河原に出ることができる。ヒュッテの下はプール状の緩やかな流れになっていて、水生昆虫のハッチがある日には、大イワナのライズがみられることもあるそうだ。

水量が多い日は入れない
さて、ヒュッテ下から上流に進むには、少々問題がある。
上流に行くためにはプールを渡る必要があるのだが、このプール、実は水量が多い時には渡ることが難しいのだ。

わざわざ9月を選んでここに来た最大の理由は、そこにある。
日本の多くの渓流は、梅雨明け以降、水量が少なくなる。9月ともなれば、渇水状態になってしまうフィールドは珍しくない。
そんな9月だからこそ、ここでは上流側に進める可能性が高い、というわけである。
補足すると、8月中も雨後でなければプールは渡れることが多い。ところがその時期は、アブに行く手を阻まれるという、別な問題が発生するのだ。
狙い通り、この日は難なくプールを渡ることができ、上流へと足を進めることができた。
プールの上流側すぐのところで、川は胎内川本流と頼母木川に分かれる。どちらも2～3kmくらい先までが、気軽にフライフィッシングを楽しめる区間だ。規模や魚影はどちらもあまり変らない。

条件は良くないのだが
さて、9月のフライフィッシングではどうにもイワナの反応が悪いことが多い。メスのイワナが荒れ食いをするタイミングに当たって、大釣りできることもあるのだが、それはまれだ。ヤマメならそれほどでもないのだが、胎内川のこの区間はイワナのエリア。さらに今回は、しばらく雨が降っていない渇水気味の日をわざわざ選んで入渓している。イワナ達は当然、神経質になっているはずだ。
実のところ今回の釣行は、「プールを簡単に渡れる」という点以外では、あまり好ましい条件ではないのだ。

どうも言い訳がましい書き方にになってしまったが、案の定、イワナの反応はすこぶる悪い。
とはいえ、9月は大物の実績が多い季節でもある。集中力を切らさないで小さななポイントも見逃さないことが、この時期、特に大切なのだろう。

と、言うのは簡単だが、実践するのは容易ではない。
この日も、反応のない流れにキャストを繰り返すたびに集中力は薄れていく。ドリフトが雑になっていく。
状況は釣れないほうへ、釣れないほうへと流れてしまうのだ。

写真のイワナはとても美しいのだが、25cmにも満たない、物足りないサイズ。

この日は結局、このくらいのサイズのイワナ数匹に遊んでもらって納竿となった。

（掲載日：2014年09月01日）

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