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今月のフィールド ~2015年1月 大井川源流~(動画あり)|フライフィッシング データバンク

「今月のフィールド」2015年1月は、静岡県の大井川源流をピックアップし、動画とともに紹介

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オフシーズン恒例!WILD-1スタッフの犀川釣行!
今年は行ける?注目を集める南アルプスの渓
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大井川源流-1大井川は、南アルプスを水源に静岡市を流れて駿河湾に注ぐ、全長168kmの大河。
この川でフライフィッシングが楽しいのは、ずばり南アルプスの山中を流れる「源流部」。美しい山岳渓流の区間だ。

フライフィッシングに限った話ではないが、この大井川の源流部は今年2015年、特に注目したい渓流フィールドである。
というのも、もしかしたら今シーズン以降しばらくの間、ここで釣りを楽しむことはできないかも知れないからだ。

着工されたリニア中央新幹線
昨年(2014年)12月17日に、リニア中央新幹線が着工された。官民一体となった巨大プロジェクトのスタートだ。
大井川源流-2リニア中央新幹線は、大井川源流部の真下を通り抜ける計画で、この区間が着工された場合、それからしばらくは、釣り人や登山客が付近に立ち入ることは、ほぼ絶望的になる。

南アルプス区間の着工は?
この区間の着工時期は2014年12月30日現在、示されていない。
南アルプスの山々をトンネルで貫通させるこの区間は難工事が予想され、環境問題などの課題も懸念され、社会的にも大きな注目を集めている。済ませなければならない法的な手続きも残されているようで、多くの関係者が着工時期に関心を持っている。

7.4km。17区画。完全予約制の自然渓流
さて、大井川源流のフライフィッシングの核心部は、椹島(さわらじま)ロッジ付近から、上流側にある二軒小屋ロッジ付近までに設定された、全長7.4kmの「大井川源流特設釣り場」だ。この区間は17区画に分けられていて、各区画に1日一組しか入渓できない完全予約制のフィールド。
大井川源流-3「特設釣り場」と名付けられているが完全な自然渓流で、流れが仕切られているわけでもなく、成魚放流がされているわけでもない。放流されているのはアマゴの稚魚のみ。イワナはすべて天然魚。イワナもアマゴもグッドサイズが多いことで知られ、もちろん魚影も濃い。

完全予約制のレギュレーションは、昨年(2014年)春に導入されたばかりだ。許可されている釣法は、フライフィッシング、ルアー、テンカラに加え、エサ釣りもOK。C&Rではない。

原則としてロッジ泊が前提
一般車両が通行できるのは、核心部の特設釣り場よりもかなり下流側にある畑薙第一ダムまで。ここから先の林道は、椹島ロッジや二軒小屋ロッジの送迎車に乗るか、徒歩で進むしかない。一般的なフライマンであれば、徒歩は選択肢に入らないだろう。が、送迎車に乗せてもらえるのはロッジの宿泊者だけ。
林道つまり、大井川源流部でのフライフィッシングを満喫するには、どちらかのロッジに宿泊することが前提になる。

畑薙第一ダムから先の林道はリニアの工事が始まると、1日数百台の工事車両が通行することになるという。そのためこの林道も舗装され道幅も広げられる見込みだ、と関係者が教えてくれた。
ダンプカーが日に数百台も行き来するということになれば、登山客や釣り人を立ち入らせるわけにはいかない。二つのロッジも休業することになるだろう、ということだった。

ところで、この大井川源流付近の山々は実は、特種東海製紙という会社の社有林だ。1区画の社有林としては日本最大の面積を誇る。特種東海製紙の前身は東海パルプ。東海パルプの創業者は大倉喜八郎で、戦前の大倉財閥を築き日本の近代化に尽力した人物だ。帝国ホテル、大成建設、千代田火災海上、サッポロビール、ホテルオークラなどの創業者でもある。
南アルプス南アルプスのこの地は、徳川幕府の老中・酒井家の所有だったが、明治時代、日本の近代化には大量の紙が必要と考えた渋沢栄一の意をくみ、大倉喜八郎がこの地を買い上げて、製紙会社である東海パルプを立ち上げたのだそうだ。
ここの林道は、当時、紙の原料として切り出された木材を運ぶためにつくられたものというわけだ。現在では紙の原料は輸入されているため、この一体の山林で伐採は行われていないということだ。

豪快なエピソード
今、この山々を管理しているのは特殊東海フォレストという特種東海製紙の関連会社で、椹島ロッジや二軒小屋ロッジの運営も行っている。

ところで、大倉喜八郎には南アルプスのこの地について豪快なエピソードが残されている。
80歳を超える大倉喜八郎が「自分の持つ土地で一番高い場所に行きたい」と言い出したのだ。白羽の矢が立てられたのは、南アルプスの名峰・赤石岳。標高3,121m。
大井川源流-4のべ2000人が突貫工事で登山道を整備。喜八郎の一行は現在の椹島ロッジから登山を開始したという。
随行者は総勢200名。喜八郎はなんとカゴに乗って道中を進み、山頂直下の急所では随行者に背負われて、ついに山頂に立ったそうだ。生きた鯛を入れた生簀まで持ち込み、山頂で祝宴を開いたとも言われ、その写真も残されているという。風呂釜を持ち込み山頂で入浴した、山頂で花火を打ち上げた、とも言われる。
大正15年、喜八郎が88歳の8月の話だ。

特設区間の最上流部へ
余談が多くなってしまった。
今回の取材は2014年8月下旬。畑薙駐車場から東海フォレストの送迎バスに乗り、「大井川源流特設釣り場」の最上流部にあたる二軒小屋ロッジに到着したのはお昼近くだった。が、あわてる必要はない。なにしろ完全予約制のフィールド。先行者はいないのだ。

大井川源流の流れは、前日まで降り続いた雨の影響でやや増水気味。それでも青空の下を流れる南アルプスの渓は、本当に美しい。この景色を眺めているだけでも、遠くまで来た甲斐があったという気持になる。

二軒小屋ロッジ ここの二軒小屋ロッジも、下流側にある椹島ロッジも、南アルプス登山の玄関口。ここを訪れる人の大半は登山客やハイカーで、釣り人はいわば「マイノリティー」のようだ。
二軒小屋ロッジには本館と新館の二つの宿泊棟があるが、いずれも館内は清潔で綺麗。原則として個室だ。登山基地となる山荘や山小屋は相部屋ということが多いのだが、相部屋に慣れていないフライマンにとって、気楽にゆっくり過ごせる個室はとても有難い。

強い流芯の向こう側を狙うが
この日入渓したのは、特設区間17区画うちの最上流部。二軒小屋ロッジのすぐ下の区画だ。川は林道沿いを流れているが、楽に入渓できる場所は限られる。しかし、送迎車のドライバーが数箇所の入渓点をとても親切に教えてくれ、入退渓に時間をとられることなくじっくり釣りを楽しむことができた。

河原に降りてみると、林道の上から眺めた印象よりずいぶんと水量があり、流れが太く流速もある。送迎車のドライバーの話では、午前中はもっと水量があったそうで、これでもだいぶ落ち着いてきたということだが、ドライフライを流せるポイントは限られてきそうだ。
こんな日は、岸際の岩盤裏など水面が穏やかで流速のないピンスポットを見つけて狙うフライフィッシングになる。
大井川源流-5そうしたポイントは手前側の岸際にもあるが、不思議なものでなぜか対岸側のポイントのほうが魅力的に見えてしまう。
強い流れの向こう側、対岸の岩盤裏にフライを落とすと、案の定、あっという間にドラッグがかかってしまった。ティペットやラインが流芯の強い流れに引っ張られてしまうのだ。ポイントに近づければ、メンディングで流れをかわすこともできるのだが、この日は流れに立ち込んで対岸に近づける場所は少なかった。

少しでもドラッグフリーで流れる距離を稼ごうと、ティペットをどんどん継ぎ足していくが、結果はさほど変わらない。ナチュラルドリフトしている時間は2秒にも満たない。
ヒットシーンしかしその2秒ほどの間にも、黒い魚影が浮いてくるのが確認できたりするものだから、ついついムキになってしまう。こんなところも、フライフィッシングの面白さなのかもしれない。

手前側の岸際に狙いを絞る
しばらくそんなことをして時間を費やしてしまったが、対岸をあきらめて手前側の岸際だけに狙いを絞ると、今度はイワナとアマゴが次々にフッキングしてきた。
この日はイワナのほうがやや多かったが、20cm少々のサイズばかり。アマゴは25~26cmくらいのサイズがアベレージだったが、このフィールドとしては少し物足りない気がする。

アマゴ対岸のポイントが狙えないということは、フライを流すポイントが半減するということになる。もしフライフィッシングの腕前が上達して対岸もしっかり流せていれば、結果は違っていたかも、などと反省してしまう釣行となった。

さて、ここ二軒小屋ロッジ付近の標高は1,300mほど。真夏の日中でも日陰に入るとかなり涼しい。8月でもアブの姿は見当たらない。
真夏にフライフィッシングを満喫できる数少ないフィールドのひとつだ。
もし今シーズンもここに足を運ぶことが許されるなら、なんとしてでも都合をつけて行っておきたいと思っている。今年行けなければ、次にこの地に足を踏み入れることができるのは、何年後になるかわからないのだから。

(掲載日:2015年01月01日)
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