■解禁を迎えた伊豆の渓流
3月上旬。この時期、多くの渓流が解禁を迎える。渓流釣りファンにとっては正月を迎えるような気分になるのが、この季節だ。

静岡県・伊豆の渓流も3月に入ると解禁を迎える。
温暖な気候の伊豆では、他の地域より一足早くメイフライを中心とした水生昆虫のハッチが見られる。解禁と同時にマッチングザハッチのフライフィッシングを楽しむことができる貴重なフィールドというわけだ。
伊豆といえば、以前は高速道路がなかったため、アクセスにはそれなりに時間を要した。しかし伊豆縦貫道の整備が進んだ現在は、新東名道から高速道路を降りた感覚がほぼないまま、修善寺まで行くことができるようになっている。
首都圏からも名古屋圏からも、格段にアクセスがよくなっているのだ。

今回は、その伊豆の渓流を巡るフライフィッシング。取材は2017年3月上旬。解禁から数日後の撮影。狩野川水系の渓を歩いた。
■持越川
まずは持越川。
狩野川の支流。アマゴの放流がしっかりされることもあって解禁当初は特に釣り人の姿が目立つ。
フライフィッシングには手頃な規模感の人気渓流だ。
他の地域でもそうだが、解禁当初のフライフィッシングは、ライズを見つけるか渓魚の姿を目視で確認するかしないことには良い結果を得ることができないことが多い。
盛期と違って、やみくもにフライを流していては、効率がとても悪いのがこの時期だ。

そんなわけで、この日もまずはここ持越川の放流ポイントを順々にチェックしてみる。解禁から間もないこの日、アマゴたちはまだ放流ポイントの近くにたまっているに違いない。
が、しかし、アマゴの姿は見当たらない。ミッジやメイフライが飛び交う姿はちらほら確認できるのだが、ライズを見つけることはできない。
ライズの有無はタイミング次第なのだが、アマゴはまだ散っていないはず。たまっているポイントがどこかにあるはずなのだが。
結局シビレを切らして、魚の気配を確認できないままロッドを振りはじめてしまった。効率の悪いフライフィッシング。もちろん結果は出ない。持越川に見切りをつけ、次の目的地・大見川に向かうことにした。
■大見川
大見川も狩野川の支流。狩野川をはさんで持越川と反対側の山並みを流れている。
やはり早期からマッチングザハッチのフライフィッシングでアマゴが狙えることで知られる渓流だ。

冷川や地蔵堂川といった支流にもアマゴが放流されていて懐がひろい感じ。尺クラスのアマゴが放流されていたりすることもあって、とても人気の高いフィールドだ。
ここでもまずは、放流ポイント付近の流れを順々にのぞいてまわる。大見川本流、冷川、地蔵堂川とまわってみるが、ここでもやはりアマゴの姿を見つけることができない。ライズも確認できない。
解禁当初、早春のフライフィッシングでは、実はこんな日はそう珍しいことではない。

渓魚が泳いでいるポイントに入って、そこでその時間に水生昆虫のハッチが始まらなければ、ライズは起こらない。しかも、ある程度まとまったハッチというのは、そう長い時間続くものでもない。
当たり前のことだが、そう考えるとライズのある時間帯にそのポイントでフライロッドを振るというのは、案外、簡単なことではないのかもしれない。「毎年この時期、ここでライズがある」といった情報を持っていれば、話は少し違ってくるのだが。
さて、結局ここ大見川でもアマゴの姿を確認できないまま、ロッドを振りはじめてしまった。入渓点は、大見川と地蔵堂川の合流地点。

合流点は、岩が転がって変化のある強い流れ。合流点の下流側にはゆったりしたフラットな水面が広がる。
その岩が転がる変化のある強い流れのスジで、一度だけ渓魚がドライフライに反応した。それが、この日最初で最後の魚の気配だった。
写真ではうららかな春の暖かな日差しに見えるが、実はこの日は冷え込みが厳しかった。さらに風も強い。アマゴのコンディションも良くないようだが、釣り人側のコンディションも相当に厳しい。
伊豆というのは誘惑が多い場所でもある。辛い思いをして釣りをするより、そうだ海を見に行こう。海の幸を満喫しよう。温泉だってある。
釣りのコンディションの良くない日は、そんな誘惑に負けてしまうのも悪くない。