■10月も楽しめる、おじか・きぬ漁協管内の鬼怒川本流
今回は、おじか・きぬ漁協管内の鬼怒川本流でのフライフィッシング。
全長176kmの大河川・鬼怒川。トラウト狙いのフライフィッシングを楽しめるエリアも広大で、管轄する漁協も複数存在する。

その広い鬼怒川の中で、鬼怒川温泉や川治温泉周辺の渓流を管轄しているのが、おじか・きぬ漁協だ。
おじか・きぬ漁協の管内の鬼怒川本流と川治温泉地区の男鹿川では、10月いっぱいニジマスの釣りをすることができる。ちなみにヤマメ・イワナは9月20日から禁漁となっている。
鬼怒川本流のフライフィッシングといえば、鬼怒川漁協の管轄区域での、大ヤマメを狙う春のマッチング・ザ・ハッチが近年人気だ。鬼怒川漁協の管轄区域は、おじか・きぬ漁協の管轄区域の下流側にあたる。

おじか・きぬ漁協の管内は鬼怒川漁協の管内と比べ、シーズンの始まりは遅いのだが、シーズン中にはやはり大ヤマメが釣れる。鬼怒川漁協のポイントのように有名にはなっていないが、知る人ぞ知る大物ポイントも存在する。
今回はヤマメはすでに禁漁となっているので、ターゲットはニジマスだ。野生を取り戻した力強いヤツを狙いたい。
取材は2017年9月下旬。鬼怒川公園駅からほど近い、鬼怒岩橋の上流側に入渓した。
■素晴らしい景色の中でのフライフィッシング
今回の入渓点には遊歩道がついている。鬼怒岩橋から上流側の上滝河川公園までの区間、約1キロの「大滝河川遊歩道」だ。

鬼怒岩橋の脇に無料の駐車場があり、そこが遊歩道の入り口。
河原に沿った遊歩道なので楽に川に降りることができて便利だ。
ただしここは、鬼怒川温泉の有名観光スポットでもあり、写真撮影のスポットとしても人気。ギャラリーの目を気にしながらロッドを振ることになる日もありそうだ。
人気の写真撮影スポットだけあって、ここの景色は素晴らしい。
広々とした流れの中に巨岩がごろごろ転がる。絶景の中でのびのびとロッドを振るフライフィッシングは、なんともいい気分。
これでバンバンとニジマスが釣れてくれれば申し分ないのだが、そううまくいくものでもない。
ご覧のとおり、とにかく広大な流れ。この流れの中のどこにニジマスは潜んでいるのか。
放流直後であれば、しばらくは放流点近くににたまっているのだろうが、野生を取り戻した固体は、流れのあちこちに散らばっているはず。これだけ広い流れでは、さすがに「ニジマスは流れの中のどこにでもいる」というわけにはいかないようだ。

こんなときは、単発でもライズを見つけられると有難いのだが、それも見当たらない。虫もほとんど飛んでいない。
流れの中を歩き回っても、ニジマスどころか小魚の魚影すら見つけることができない。
仕方ない。
ニジマスのつきそうな流れに手当たり次第ドライフライを落としていくが、ウグイの反応すらない。ウェットに切り替えて様子をみるが、状況は変らなかった。
本流のフライフィッシングでは、こんな日も珍しくはない。気を取り直して場所を変えるとしよう。
■男鹿川・川治温泉C&R
おじか・きぬ漁協の管内には、こんな日でも自信を持って移動できる心強いフィールドがある。男鹿川の川治温泉C&Rエリア。

本流での結果が思わしくないとき、それでも渓魚の姿を拝みたいなら、迷わずここに移動するのがよいだろう。
なにしろここなら「ニジマスは流れの中のどこにでもいる」のだ。
このC&R区間は鬼怒川本流と同じ漁券で釣りをできるのも有難い。気軽に本流から移動してくることができる。
ヤマメの魚影も濃くイワナもいるのだが、こちらも鬼怒川本流と同様にヤマメ・イワナは9月20日から禁漁。ニジマスのみ、10月いっぱい釣りができる。
■手頃な規模感。魚影も目視できる。

このC&R区間は、川治温泉街のど真ん中に設定されている。
人気の高い有名温泉地だけに、やはり観光客の視線の中でフライロッドを振ることになる。
対岸には露天風呂もあったりして、風呂に浸かっている温泉客と目が合いそうになったりもする。
鬼怒川本流と比べると流れの規模は手頃。3~4番ロッドのフライフィッシングが楽しい規模感だ。ポイントを絞りやすいのがうれしい。
プールで目を凝らすと、ニジマスやヤマメの泳ぐ姿を目視することもできる。本流で魚の存在を確認できなかった時には、これはうれしい。
■派手なライズを繰り返すニジマス
この日もここの流れは期待を裏切ることがなかった。「川治ふれあい公園」前のプールではニジマスとヤマメが盛んにライズを繰り返している。羽虫も飛び交っている。ミッジが多いがメイフライの姿も確認できる。

時間帯の違いということもありそうだが、先ほどまでロッドを振っていた鬼怒川本流とは状況がずいぶんと違う。生命感に溢れている。
しばらく観察してみると、定位してライズしているのはヤマメが多い。流下してくるミッジなどをチョンと静かについばんでいる。
一方、ニジマスは神出鬼没。あちこち泳ぎ回りながら流下物を探している。なので喰い方も荒っぽく派手だ。流下物に横っ飛びでバシャンと飛びつくヤツもいる。
いずれにしても喰っているのはミッジや小型のメイフライなので、ティペットには#16や#18のこの季節としては小型のドライフライを結んだ。

狙いどおり、小さめのフライへの反応はとてもいい。
だが、結構な比率でヤマメが釣れてしまう。ヤマメはすでに禁漁なので困ったものだ。
やむなくフライを大きなテレストリアル・パターンに変更。フックサイズ#10くらい。
これでヤマメはほとんど反応しなくなったが、同時にニジマスの反応も渋くなる。フライを見にくるが、直前で喰うのをやめる個体が多い。
とはいえ、飽きない程度にはフッキングしてくれて元気な引きを楽しませてくれる。アベレージサイズは30cmほど。大型は姿を見せてくれなかった。
お世辞にも「美しい魚体」、「野性味溢れる」とはいえないのだが、全く反応を得られなかったこの日の鬼怒川本流を考えれば、気分は上々だ。