2013年は、すいぶん天候に悩まされたシーズンだった。
9月前半、福島県・檜枝岐での取材時も、朝から雨に見舞われた。
天気予報を見ても、雨雲レーダーを確認しても、逃げ場はなさそう。ところが、檜枝岐川(実川)のC&R区間を覗いてみると、増水していない。それどころか、流れは渇水気味。上流で取水している為だ。これなら釣りができる。
雨は降ったり止んだりを繰り返している。車をC&R区間のすぐ前に停め、雨が止んでいる間だけ、渓に駆け下りていって、釣りをしよう、ということになった。
雨雲レーダーで、何分後に次の雨が降るかが大体予測できている。ドライフライでの釣りができそうなのは30~40分間。なんとしても、この時間内にイワナと対面したい。
見切られたパラシュート
最初に結んだフライは、ビーズアント。お尻だけ沈むタイプのパラシュートフライだ。
反応は1投目からあった。イワナが浮いてきて、少しフライを眺めてから、また石の下に戻っていった。渇水気味の緩い流れのおかげで、イワナの挙動がよく見える。
ここのC&R区間はフライフィッシング専用。釣り人はフライマンだけだ。そうしたことから、この区間の渓魚は、ずいぶんフライを見慣れているのだろう。
フライを見慣れた魚に、渇水気味の浅く緩い流れ。状況がシビアなのは明らかだった。
数投、同じようなことを繰り返した後に結び替えたフライが、オーストリッチソラックス。
シルエットの異なるフライで
夏から秋にかけて使うことの多いテレストリアルフライは、その多くがパラシュートタイプだ。フライを見慣れた百戦錬磨のここのイワナたちは、パラシュートのシルエットを覚えていたのかも知れない。
このオーストリッチソラックスは、ソラックスダンと同じ形状で、シルエットがパラシュートタイプとは異なる。さらに、ウイングがCDCなので、ナチュラルドリフト感に差がある。
結果はすぐに出た。
岸際の白泡の筋にオーストリッチソラックスを流すと、「ポチョ」という吸い込むような、控えめなライズで、イワナはフライを咥えたのだ。
成魚放流のイワナだが、まずまずのサイズ。撮影を終えた頃には雨が降り出していた。
(掲載日:2013年09月10日)
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