
6月に入るとエルクヘアカディスの出番が増えてくる。
この時期はまとまったハッチが見られない時間帯が多いが、イワナもヤマメ・アマゴも食欲は旺盛だ。ヒラキなどに出てきて、そこに流れてくる虫をたいがいは偏食することなく捕食している。
カディスも日中にはまとまったハッチこそないものの、1日中だらだらとハッチしていて、渓魚にとって重要な捕食対象になっていることが多い。
フライフィッシングのスタイルも、釣り上がりながら、途中でもしライズを見つければそれを狙う、といった形が主流になる。
そうした状況で使い勝手が良いドライフライがエルクヘアカディスというわけだ。視認性が良く浮力もあるので、ざわついた水面を流しても、見失ったり沈んでしまったりすることが少ない。釣り上がりにはとても適しているフライパターンだ。

さらには、ライズを見つけた際にも、フライ交換をすることなくそのまま使うことができる。イミテート性も悪くないのだ。
細軸フックでも巻きやすいカディス
ところで、最近の渓流用のフライフックは4x Fineといった細軸のものがすっかり主流になった感がある。ボディを細くリアルに巻ける。軽量なので細いティペットでも無理なくターンさせることができる。フッキングの際の刺さり具合も良い。
渓流域のフライフィッシングにおいては、細軸フックのメリットは大きい。
ところが。この細軸フック、どうにもエルクヘアカディスを巻きづらいのだ。
エルクヘアはかさばるので、なかなか細軸の上に上手く乗ってくれない。仕上げに締め付ける工程も難度が高くなる。
それでも、この季節にはカディス系フライは欠かせない。
そこで今回は、細軸フックでも巻きやすい、ウイングにマラードを使ったカディスフライを紹介したい。
インジケータ付のマラードカディス
まずはインジケータのついた視認性抜群のパターン。
写真のパターンでは、ウイングにグレイマラードをダイド(染色)したものを使っている。ウイングの取り付け方はエルクヘアカディスと全く同じだが、ファイバーが細くかさばらないので、細軸フックでも簡単にタイイングできる。
フックは、細軸フックの中でも注目度の高いがまかつR17-3FTだ。特にこのフックはエルクヘアカディスを巻きづらいのだが、マラードウイングならいとも簡単にタイイングすることができる。
写真のパターンのボディにはオレンジにダイドされたコンドルクイルを巻いているが、この部分は、通常のダビング材など、他のマテリアルを使っても構わない。
このパターンは視認性が高いことから、イブニングや荒瀬でも使いやすい。白いインジケータのパターンも別に用意しておくと、イブニングなどではさらに使い勝手が上がるだろう。
インジケータのないパターンこちらは、インジケータのないパターン。
タイイングの工程は、エルクヘアカディスと全く同じで、ウイングのマテリアルだけが違う。
このパターンの場合、ブリーチ(脱色)のエルクヘアを使ったエルクヘアカディスと比べると視認性は少し落ちる。浮力もエルクヘアカディスのほうが上。だが、イミテート性は、こちらのパターンのほうがやや高い。出来上がったフライを眺めていると、本物のトビゲラに見えてくる。マラードの縞模様が絶妙なのだ。
とは言え、それは人から見たイミテート性。渓魚からどう見えているのかは、また別の話だ。エルクヘアカディスには、人から見たイミテート性とは違う、渓魚にとって何か大きなファクターがあるに違いないと筆者は思っている。したがって、今回紹介したフライパターンがエルクヘアカディスよりも釣れるのか、と問われれば、それはあまり自信がない。
(掲載日:2014年06月07日)