
11月。この季節にニジマスを狙ってのフライフィッシングを楽しめる自然渓流が近年増えている。
従来は禁漁期だったこの時期は、以前は翌春の解禁を首を長くして待つしかない、いわば「禁欲」の季節だったのだが、今は違う。近年の秋や冬は、シーズン中のイワナ・ヤマメ狙いとは一味違った、ダイナミックなフライフィッシングを満喫できる特別な季節になっているのだ。
ハッチの中心はミッジへ
さて、ニジマスを狙えるような渓流の11月は、夏には影を潜めていたメイフライやガガンボなどの水生昆虫が盛んにハッチしていることが多い。やがて12月が近づき水温が低くなってくると、ハッチの中心はミッジへと切り替わっていく。

もちろんミッジにもニジマスはライズする。でかい魚体をしたニジマスが、なんでそんな小さなものを?と思うのだが、ミッジに対するニジマスのライズは盛んだ。
ミッジは緩い流れでハッチするので、そこを泳ぐニジマスの挙動もよく見えることが多い。フラットな流れの中で大ニジマスがゆっくり浮上し、大きな背中を水面に出しながらライズする姿は圧巻だ。
ライズしない大ニジマスを狙う
しかし、ライズはいつでもあるとは限らないし、底に張り付いて水面に関心を示さない大ニジマスも少なくない。
そうしたライズをしないニジマスを狙うフライパターンが、今回紹介する「ビーズヘッドミッジラーバ」。ティペットに小さめのインジケーターをつけて、ルースニングで沈めて使うフライパターンだ。
このフライは、流れの緩いプール状のポイントで使うことが多い。ミッジは緩い流れでハッチするし、小さなミッジを喰うにはニジマスも、平坦な水面でないと上手く喰いつくことはできないのだろう。

そうしたポイントでは大きなニジマスは目視できるので、サイトフィッシングが楽しい。見つけたニジマスの鼻先に、沈めたこのフライをゆっくり流してやるわけだ。
ボディはムースメーン
ボディに巻いているのはムースメーン。右写真のように、濃い色と白い色のファイバーを1本づつ切り取り、これをフックに巻きつけることで、独特のマダラ模様を表現している。
ムースメーンは、濃い色のファイバーよりも白いファイバーのほうが太い。したがって、それぞれ同じくらいの太さの部分を切り出して使うと、バランスの良いマダラ模様に仕上げることができる。
フックには2本のファイバーを同時に巻きつける。
写真のパターンで使ったビーズは金色だが、これは銀色でも差し支えない。気をつけなければならないのはビーズの大きさだろう。フックサイズが#18以下と小さいので、それに合わせてビーズも小さめのものを選ぶ必要がある。ビーズが大きすぎると、シルエットが不恰好になってしまうのだ。

ビーズの後ろ側、ソラックス部分には少量のダビング材をつけている。写真のパターンでは茶系のラビットファーを使ったが、他のダビング材でも差し支えない。これも量が多すぎると不恰好になるので気をつけたい。
フックは細軸で
さて、今回のフックはティムコのTMC212Yを使用した。カーブドシャンクの細軸フックだ。ミッジラーバのイミテートなので、ボディは出来る限り細く仕上げたい。細身ボディのフライパターンをタイイングする時には、このフックに手が伸びることが多い。
フックサイズは、#18~20くらい。TMC212Yを使う場合には#17~#19になる。これ以上小さくなると、ボディのマダラ模様を上手くつくるのが難しくなるだろう。
細軸フックで心配なのは、大ニジマスを掛けた際に折れたり伸びたりしないか、という点だ。
今回のフライパターンで実際に釣れたことがあるのは、50cm少々のニジマスが最大。このクラスなら細軸フックでも特に問題はなかった。それ以上の大物には残念ながら試せていない。
ところで「ミッジラーバ」とは、蚊(蚊に代表される小さな虫全般をミッジと呼ぶ)の幼虫のこと。つまり「ボウフラ」だ。
(掲載日:2014年11月07日)