4月の渓流では様々な水生昆虫のハッチ(羽化)が盛んになってくる。マッチング・ザ・ハッチのフライフィッシングを本格的に楽しめる季節の到来というわけだ。
その4月のフライフィッシングで意識しておくべき水生昆虫のひとつとして、フタバコカゲロウという名のメイフライ(カゲロウ)が挙げられる。
羽化形態の違いが読みを難しくしている
シロハラコカゲロウやヤマトコカゲロウなどをひとくくりにして「コカゲロウ」と呼ぶことがあるが、フライマンとしてはフタバコカゲロウは、それらと区別しておく必要があるだろう。
というのも、一般的なコカゲロウとフタバコカゲロウでは羽化の形態が異なる。そのため、イワナやヤマメなどの渓魚の捕食ステージも少し違ってくる。
フタバに対するライズに苦戦した経験のあるフライマンは少なくないはずだが、苦戦の原因は、おそらくこの捕食ステージの読み違いからきていることが多いのではないだろうか。
フタバのダンは水中を流れる
一般的なコカゲロウは水面羽化。渓の底から浮き上がってきたニンフ(幼虫)は、水面上を流されながら脱皮してダン(亜成虫)と呼ばれる状態になる。
一方、フタバコカゲロウの場合は水中羽化だ。ニンフは渓の底石の上で脱皮。ダンの状態で水中を流されながら浮上する。
一般的なコカゲロウのダンは水面を流れるが、ハッチ(羽化)したばかりのフタバコカゲロウのダンは水中を流れているというわけだ。
瀬で起こるスプラッシュライズ
フタバのニンフは瀬の底石にいる。ハッチもそこで起こり、ダンはまず瀬の中を流れる。今の時期、浅い瀬でスプラッシュライズ(飛沫をあげた派手なライズ)を見つけたら、それはイワナやヤマメが、水面直下を流れるフタバコカゲロウのダンを捕食した可能性が高い。
この場合、水面上には流下物を見つけられないことが多く、フライマンは一体何が喰われているのかと、首をかしげてしまうことになる。このケースで水面から高く浮くフライパターンをセレクトしてしまうと、ほとんどの場合、それは渓魚に見切られてしまうことになるだろう。捕食ステージが違いすぎるというわけだ。
DDの存在
Drowned Dun(DD)の存在にも触れておこう。これもフタバに対するライズの読みを難しくしている要因だ。
DDとは「溺れたダン」。瀬の水中を流されるフタバのダンは、流れにもまれてしまうなどして、水面に浮上する前に溺れ死んでしまう個体も多い。渓魚にとっては格好の捕食対象だ。
DDに対するライズは、瀬が流れ込むプールで起こる。瀬でのライズと違い、ゆっくり静かなライズであることが多い。飛び立つことのない、死んでしまった個体が緩やかな流れに漂っているのだ。渓魚たちも慌てる必要がないのだろう。
このようなライズも、フライセレクトを間違えると、渓魚に見切られてしまうことが多い。慌てる必要のない渓魚達は、フライをじっくり品定めするのである。
瀬のライズを狙うパターン
さて今回取り上げたのは、フタバコカゲロウに対する瀬で起こるライズを狙うフライパターン。
カーブドシャンクのフックを使うことでボディ部を水面直下に沈める「半沈み」タイプだ。スキッと水面に突き刺さって欲しいので、ボディ部にコパーワイヤを巻いて少し重みをつけている。
写真のフライではフックにAXISCOの1130を使用。サイズは#18と#16を用意しておきたい。
最大の特徴はスペント状にしたウイング。フタバのダンは、死んだ個体でなくてもウイングがややヒラキ気味ということもあり、スペントのパターンにタイイングされることが多い。
スペントウイングに使った素材は、キッチン用品のラップ。ラップを切り出してクシャクシャにしたものだ。
今回は瀬で使うことを想定したフライパターンなので、視認性を重視しエアロドライウイングのインジケータをつけている。ハックルを巻いているのも、瀬を流すことを考え浮力を補強するためだ。
ところで、このパターンのウイングのイミテート性は高くないので、水面が穏やかなプールでのライズには向かない。プールでのライズを狙うには、ウイングをCDCにしてイミテート性を高め、インジケータも外したパターンが良いだろう。
フタバコカゲロウのハッチの時間帯は昼下がりからイブニングにかけて。
今の時期、その時間帯に瀬の中でスプラッシュライズを見つけた時が、このフライの出番となる。
(掲載日:2015年04月01日)