今月の一本　～2015年9月　クイルウイング・クリケット～（動画あり）｜フライフィッシング　データバンク

多くの渓流では9月中に解禁期間が終了する。フライフィッシングには寂しい季節の到来だ。

■大型魚の季節
しかし9月は大物の釣果が期待できる季節でもある。
普通に考えても、3月や4月の頃の魚体に比べ、エサの豊富な季節を過ごした後の9月の魚体は大きくなっているはずだ。下流側にダムや湖がある渓流では、ダム育ちの大型魚たちが、産卵のために遡上してくる時期でもある。
自分自身の釣行を振り返っても、記憶に残るような魚体の渓魚が釣れた時期は、イワナもヤマメでも9月が多かったように思う。
ドライフライの渓流フライフィッシングでも、一発大物を狙いたくなるのが9月というわけだ。
■フライも大型に
大型魚には大型フライが効く、という話はよく耳にする。

コカゲロウやミッジのまとまったハッチがあって、盛んにそれにライズしているようなケースを除けば、実際そのとおりなのだろう。大きくなった魚体を維持するためには、大き目のエサを喰うほうが効率が良いに違いない。

そんなわけでこの季節は、フライボックスの中に大型のドライフライが増えてくるのだが、今回紹介するフライパターンも大型フライの部類だ。クリケット（コオロギ）をイミテートしたフライパターンで、フックサイズは#8～#12くらいが適当。視認性がよく浮力もあって使いやすいドライフライだ。

■深みにいる大型魚を誘い出す
夏から秋にかけての季節、大き目のドライフライを使いたくなるシーンといえば、やはり水深のあるポイントに出くわしたときだろう。
いかにも大イワナが潜んでいそうな深い淵。大ヤマメが泳いでいそうな深瀬。あるいは雨で増水した流れ。

そうしたポイントではこの時期、小型のドライフライで良い結果を得られることは少ない。
コカゲロウなどのまとまった流下でもあれば話は別だが、栄養価の低い小さなエサをひとつ喰うために深場から浮き上がってくるというのは、大型魚にとっては割に合わないのではないだろうか。
その労力に見合ったボリューム感のあるエサでなければ、大型魚は底から浮いてきてはくれないのではないだろうか。
そうしたシーンで活躍してくれるのが、このフライパターンというわけだ。
深い淵などの「いかにも」というピンポイントに、少し派手目にフライを着水させる。魚にフライの存在を認識させるわけだ。するとまるで潜水艦のようにイワナが浮上してきて、大きな口をあけ、ゆっくりとそのフライをくわえる。

実際は、そうそう上手くいくものでもないのだが、似たような経験のある方は少なくないはずだ。

■高い浮力
このパターンのボディ部分に使ったマテリアルはエアロドライウイング。エアロドライウイングをよじりながらフックに巻きつけている。
エアロドライウイングを使った理由は、高い浮力を確保することにある。中空素材であるエアロドライウイングの持つ強力な浮力は魅力的なのだ。
水面がやや荒っぽい深瀬。大ヤマメがいそうな流れだが、そのようなポイントでも波にもまれてフライが沈んでしまうことがない、というのが狙いだ。

■印象的なレッグは結び目をつけたフェザントテールで
レッグにはフェザントテールを使っている。束ねた3本のフェザントテールを結ぶことで、コオロギの後ろ足の折れ曲がりを表現した。

渓魚がこのフライをコオロギと認識しているかという点については懐疑的だが、この手のレッグのあるパターンに対して反応が良い時というのは確かにある。他のフライパターンとは明らかに違うシルエットに仕上がることが、そうした反応を生み出しているのだろう。

ウイングにはグースクイルを使用したが、色合いが近ければ他のクイルマテリアルを使っても差し支えない。

フックは今回はティムコのTMC200Rを選択した。ニンフに使われることが多いフックだが、ロングシャンクであるという点と、大型魚がフッキングしても変形したりすることのない強度があるという点で、今回のフライパターンに適していると判断した。

ハックルをつけているのは、水面での姿勢を安定させるためだ。これがないと着水した時や、流れにもまれた時に、フライが横倒しになってしまう。


（掲載日：2015年09月01日）

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エアロドライウイング（フライマテリアル）

フェザントテール（フライマテリアル）

ティムコTMC200R（フライフック）