
いつのことだっただろうか。
3月の渓流で何気なく岸辺の石に目をやると、たくさんの黒い虫が塊のようになってモゾモゾと動いていたことがあった。
一瞬ギョッとしたが、じっくり眺めてみると、それはクロカワゲラだった。
フックサイズにして#20くらい。数十匹はかたまっていただろうか。
■早春の羽化
見かける水生昆虫の少ない早春・3月。この季節はフライセレクトの選択肢が限られてしまう。そうした中でこの時期に羽化するクロカワゲラは、早春のフライフィッシングにおいては貴重な種といえるだろう。
英語ではストーンフライと呼ばれるカワゲラは、その名のとおり渓流の石周りで見かけることが多い。

カワゲラのニンフ(幼虫)は瀬の底石を這い回って暮らしているが、羽化が近づくと川岸まで泳いで石にたどりつき、石をよじ登ってそこでハッチする。陸上羽化だ。
そのため、カワゲラは石の周辺で見かけることが多いのだろう。
水面近くでハッチするメイフライやカディスと違って、カワゲラは陸上羽化の種が多いのだ。
■脇役的存在のカワゲラ
カワゲラは、メイフライやカディス等と比べると、ドライフライのフライフィッシングでは脇役的な存在だ。
ハッチする水生昆虫の少ない早春ですら、主役はミッジ。やはりカワゲラは脇役なのだ。
その理由は、ハッチの形態がメイフライやカディスと異なる点にありそうだ。

カワゲラはニンフ(幼虫)の状態から一気にアダルト(成虫)に羽化する。メイフライのダン(亜成虫)や、カディスのピューパ(サナギ)のような状態がない。
ダンやピューパは動けない状態で水面付近を流れるので、イワナやヤマメにとっては非常に捕食しやすいエサとなるが、カワゲラの場合は、そうした無防備な状態で水面を流れることがない。
さらに陸上羽化のため、アダルト(成虫)が水面をまとまって流されることも少ない。風で水面に落ちた個体がポツポツと流れてくる程度というわけだ。
まとまって流れていないので、それを捕食するライズも散発。フライマンからは見つけづらいというわけだ。
こうした理由からカワゲラは、ドライフライのフライフィッシングではなかなか主役の座に躍り出ることがないのだが、早春に岸際で散発のライズを見つけた時などは、カワゲラ・パターンのドライフライをキャストしたくなる。

そのようなシーンでは、岸際の石から転がり落ちたカワゲラが喰われた可能性が高いのだ。
■カワゲラの種類
さて今回タイイングしたのは、そのカワゲラをイミテートしたドライフライ。色違いで2種をタイイングした。
日本のフライフィッシングで名前があがることが多いのは、クロカワゲラの他に、オナシカワゲラとミドリカワゲラだが、色合いとサイズ、羽化時期がそれぞれ異なる。
クロカワゲラの羽化は3月。黒に近い濃いブラウンで#18~#20。
オナシカワゲラは4月~5月。グレーに近い薄いブラウンで#16~#18。
ミドリカワゲラは4月以降にハッチするのが一般的で、緑茶のような淡いグリーン。#18~#20だ。
■カワゲラ・パターンのタイイング

今回は、クロカワゲラを意識した濃いブラウンのパターンと、オナシカワゲラを意識した薄いブラウンのパターンをタイイングしている。
ボディ部分はフェザントテールでつくっている。濃い色のパターンには、ナチュラルカラー。薄い色のパターンにはブリーチ(脱色)のフェザントテールを使用した。
ウイングはコックネック。ファイバーを逆側にしごいてフックにとりつけている。濃い色のパターンにはダークブラウン。薄い色のパターンにはグリズリーを使用した。
ウイングはボディよりも長め。ボディのおしりからはみ出すくらいの長さにする。
アンテナはバーサテールでつくっている。このパーツはなくても釣れ方には影響がないと思うが、人間から見たときにの見栄えは格段に違ってくる。見栄えの良いフライは自信を持ってキャストできるので、今回はこれをつけている。

フックはショートシャンクのスタンダードタイプが適している。
今回は、がまかつ・R17-3FTにタイイングした。
このフックは刺さり具合の良さが特徴で、フッキング率が格段に上がる。
コーティングが優れているためだが、このコーティングのおかげで、タイイング時に下巻きがすべってしまうのが難点。これを防ぐため、下巻き直前に、瞬間接着剤をシャンクに塗るひと手間が必要だ。
インジケーターにはCDCを使用した。やはりナチュラルカラーが似合うが、視認性の高い色を選択する手もある。
(掲載日:2016年03月28日)