■4~5月のライズを狙う水面直下パターン

4月、5月と季節が進むにつれて、フライフィッシング・フィールドは急速に生命感に溢れてくる。
ハッチする水生昆虫も、ミッジが中心だった2月や3月と比べると、水生昆虫の種類は格段に増え、渓流の水面上は賑やかになってくる。
特にメイフライは大小様々な種のハッチが見られるようになる。マッチング・ザ・ハッチのフライフィッシングが最も楽しい季節というわけだ。
今回紹介するフライパターンは、そんな生命感に溢れる4~5月のライズ狙いのシーンで活躍してくれる水面直下のドライフライ。
ライズの主が何を喰っているのか、いまひとつ確信が持てないような場面で試したいフライパターンだ。
■何を喰っているのか判断に迷う場面

コカゲロウやオオクマ・マダラカゲロウといったメイフライのまとまったハッチがあって、明快にそれが捕食されているようなシーンでは、その種をイミテートしたフライパターンを使うのが一般的だろう。
しかしライズしているイワナやヤマメが何を喰っているのか、判断に迷う場面というのは、決して少なくない。
そんな時に捕食対象を推理しながら、あれこれフライセレクトに悩むのも、それはフライフィッシングの楽しみのひとつだろう。見事推理が的中して渓魚を手にしたときの喜びはフライフィッシングの醍醐味かもしれない。
■羽化に失敗して溺れた個体

このフライはクリップル・パターンのバリエーション。クリップルとは、羽化に失敗した個体を指す。フライ名につけたドロウンドとは、溺れたことを意味する。
羽化に失敗して溺れたメイフライを意識したフライというわけだ。
溺れて表層付近を流れるイメージなので、ボディ部分は水面下に沈むようにする。水面下から見ると、写真のような感じだ。
何が喰われているのか判断に迷う場面で、クリップルはフライセレクトの有力な候補だが、このフライパターンはその選択肢のひとつということになる。
複数種のメイフライがだらだらとハッチして、それにともなうライズもポツポツと見られるような時間帯で、特に頼れるフライパターンだ。
■ファジーなシルエット
ご覧のように、シルエットはモジャモジャとしたファジーな仕上がり。
このフライに喰いつくイワナやヤマメは、もしかしたらクリップルにライズしていたのでなく、イマージャーや表層を流れるニンフを捕食していたのかもしれない。
そうしたライズにも対応できるところが、ファジーなフライの利点だ。カディスの時期になれば、カディス・ピューパへのライズにも対応できる。
■キャスト前の処理が肝心

このフライは、写真のようにハックルの浮力で浮く。
したがって、キャスト前にはハックルとインジケーターに、しっかりとフロータント処理を施しておく必要がある。
その際、ボディ部分にフロータントがついてしまわないよう、注意が必要だ。ボディ部分は沈めるので、キャスト直前にしっかりと水で濡らしておく。
今回のパターンに限らず水面直下のフライパターンでは、ボディ部分がきちんと水面を突き破ってくれなければ、釣れる可能性はゼロに近くなってしまう。
■タイイング

レッグのようでもあり、クシャクシャになったウイングのようでもあるモジャモジャの部分は、パートリッジ。このパターンの特徴的なマテリアルだ。
ボディはフェザントテール。フェザントテールはちぎれやすいので、ティンセルを巻くことで補強している。耐久性が気にならなければ、ティンセルは不要。
インジケーターにはラムズウールを使用した。ライズ狙い用なので、エアロドライウイングでは色合いが派手すぎる。エルクヘアを使う手もあるが、それだとヘッド部分が太くなってしまう。CDCを使うか、ラムズウールを使うか、どちらかがしっくりくる。
フックはストレートシャンクであれば、特にこだわる必要はない。フックサイズは#14~#18くらいが妥当だろう。
(掲載日:2017年04月28日)