
英国の名門フライフィッシング・ブランドHARDY(ハーディー)。世界中のフライフィッシャーを魅了してやまない伝統的なメーカー。
■北アルプスを水源とする2河川
今回はそのハーディーのロッドとリールを連れて、北陸と奥飛騨の渓を巡る旅をした。
北陸では富山県の銘川・常願寺川。
岐阜県の奥飛騨では人気フィールド・高原川を釣行。
両フィールドとも水源は北アルプスの山々。雪代に鍛えられた筋肉質でグッドサイズのイワナ・ヤマメが飛び出す渓流として知られている。
■ロッド・リールは#4と#3を用意

用意したのは、#4と#3。
#4のロッドは、「Jet 8'6"#4」。
リールは「L.R.H.Lightweight(LRHライトウェイト)」。
#3ロッドは、「Jet 7'6" #3」。
リールは「Featherweight(フェザーウェイト)」という組み合わせ。
全てハーディーの現行モデルで、日本でも新品を手に入れることができるモデルだ。
今回使用したリール「L.R.H.Lightweight」と「Featherweight」は、ハーディーの中では共にLightweight(ライトウエイト)というシリーズに分類されている。
このシリーズ、実に1930年代から現在に至るまで、基本的な設計・デザインが変っていないのだという。シンプルな構造と機能。英国らしい気品を感じる落ち着いたデザインと色合い。フライリールとして、この形がひとつの完成形ということなのだろう。
ロッドはJetシリーズの番手違い2本を使用したが、現行品のJetシリーズは、ハーディーが誇る最新テクノロジー「SINTRIX®330素材」を使ったカーボンロッドだ。この素材は、その重量に対しての強度が従来より飛躍的に向上しているそうだ。そのおかげでロッド重量が従来よりもが30%ほども軽くなっているという。つまり現行のJetシリーズは「軽いのに強度が高いロッド」というわけだ。
■常願寺川ではJet #4を使用

今回まず訪れたのは富山市を流れる常願寺川。北アルプスの沢水を集めて富山湾に注ぐ、北陸屈指の渓流フィールドだ。
入渓ポイントは、富山地方鉄道立山線の立山駅の下。立山黒部アルペンルートの富山県側の玄関口にあたる。
ここの少し下流側に大堰堤があって、実は常願寺川での渓流釣りの核心部はその堰堤よりも下流側。この日は、前日のまとまった降雨の影響で増水と濁りがあったため、核心部はパスしてここに入渓することになった。
渓魚の放流がない河川なので魚影は濃くない。さらに核心部から魚が遡上できない大堰堤の上流側ということで、多くの反応は期待できないのだが、仕方ない。

このポイントは川幅がある。この日は水量も多く、流れは本流的になっていた。
遠目のポイントを狙いたいので、タックルは#4。
ロッド「Jet 8'6" #4」。
リール「L.R.H.Lightweight」の組み合わせを選択した。
ロッドのアクションはミディアムファースト。キャストをしてみると、強い流れの向こう側の遠いポイントに力強くラインが伸びていくことを実感できる。
ある程度の川幅がありバックスペースのとれるフィールドでは、このロッドは多くの人が心地のよさを感じることができるだろう。銘品リール・「L.R.H.Lightweight」とのバランスもいい。
■銘品フライリール・Lightweight(ライトウエイト)シリーズ

「L.R.H.Lightweight」をはじめとするハーディーのLightweight(ライトウエイト)シリーズは、フライリールの銘品として名高い。
左巻き・右巻きを簡単に変更できる構造。これがハーディーとして初めての左右変更可能なフライリールとして発売されたものだったそうだ。
完成度の高いシンプルな構造と落ち着いた飽きのこないデザインは、今ではフライリールのスタンダードともいえるものだが、発売当初はおそらく斬新なものとして認識されたに違いない。
ハーディーというとトラディショナルなブランドという印象が強いが、実は常に新しいテクノロジーに挑戦してきた先進的なメーカーでもあるのだ。

さて釣りのほうだが、予想どおり反応はとても渋い。この日のイワナの付き場をなかなか見つけることができない。
やはりこの区間は魚が少なそうだ。
手前側の強い流れの向こう。浅く緩い流れに上手い具合にフライが流れると、そこからはイワナが気前よくフライに飛び出してくれた。この日のイワナ達はこうしたポイントにいたようだ。サイズはやや寂しかったが、同じような流れで何匹かのイワナが遊んでくれた。
手前側の強い流れの奥のポイントは、こちらの立ち位置からはやや距離がある。うっかりすると手前の流れにラインがとられ、あっという間にドラグがかかってしまう。
このようなポイントでは、ロングキャストで力強くラインを伸ばしてくれる「Jet 8'6" #4」のポテンシャルの高さを、特に実感することができた。
■高原川では#3
翌日は岐阜県の奥飛騨に移動。やはり北アルプスを水源とする高原川を釣った。
実は富山市内から奥飛騨までは60km強。神通川沿いを走る国道41号→471号線で1時半ほどで行けてしまう距離にある。
入渓点は、蒲田川が合流する地点より少し下流。グッドサイズのヤマメが多いことで人気のフィールドだ。
ここで使用したロッドは「Jet 7'6" #3」。セットしたリールは「Featherweight(フェザーウェイト)」。
「Jet 7'6" #3」を振ってみて、まず驚かされるのは、その軽さだ。#3ロッドを使い慣れているのであれば、ほとんどの方はその軽さにビックリすることだろう。

軽さの理由は、前述の「SINTRIX®330素材」にある。
このカーボン素材に使用されている樹脂は、3M社が航空・宇宙産業向けに開発したもの。それをハーディーのエンジニアがフライロッド用にチューニングすることで完成した素材ということのようだ。
前述したとおり、ハーディーは先進的なメーカーである。近年脚光を浴びているラージアーバー・リールにいたっては、なんと1911年にすでに製作していたというから驚きだ。「SINTRIX®330素材」のような先端技術に目をつけてしまうあたりからも、ハーディーのパイオニア精神が今もって健在であることを認識させられる。
■ようやく出てきたイワナ

さて、この日の高原川はやはり増水気味。雨雲レーダーで確認すると、上流域ではこの時間帯も降雨があるようだ。渓魚の反応は前日の常願寺川に引き続きかなり渋い。
日中は小型のヤマメが時折フライに飛びついてくるのみ。満足のいくサイズには出会うことができない。
それなりのサイズの渓魚がドライフライに反応しはじめたのは、夕刻ごろからだった。
ヤマメは相変わらず、おチビちゃんばかりだが、日中には姿を見ることがなかったイワナが釣れはじめた。
終わりよければ全てよし。イブニングタイムになってようやく今回の釣行で最大となった27cmほどのイワナを、ハーディーのロッドとリールは連れてきてくれた。