■魅力的な渓が多い「和賀川水系」
岩手県を流れる和賀川。
岩手県と秋田県の県境近く、奥羽山脈・和賀岳に源を発する全長80kmの北上川支流。北上市内で北上川に合流する。

フライフィッシングや渓流釣りをたしなむ方であれば、この川の名を目にする機会は多いだろう。
岩手県の沢内村は、この和賀川上流域にあった秋田県との県境の村だ。現在は市町村合併により、隣の湯田町と合併して西和賀町の一部となっている。
旧沢内村には、イワナやヤマメの棲息する魅力的な渓流が数多く存在する。それらの渓は全て和賀川の水系で、メディアでも度々「和賀川水系の川」として紹介されている。多くのフライマンが「和賀川」の名を目にしたことがあるのは、このためだ。

今回は、英国の名門ブランド・ハーディーの新作バックと新作フライリールを手に、その旧沢内村・和賀川水系の渓流を釣り歩いた。
■老舗の最新作
1873年にフライフィッシングメーカーとしての歩みをスタートしたハーディー。140年以上もの歴史を持つ老舗中の老舗。
フライフィッシングの世界ではあまりに名高いブランドで、当時の英国国王が愛用するなど、ハーディーにはこれまで各国から数多くの「王室御用達許可」も与えられてきた。
その名門ブランドから登場した新作。ひとつはフィッシングバッグ。もうひとつはフライリール。
■英国の職人が1台1台手作りするフライリール
新作リールは、なんとクラシック・モデル。名称は
「THE DUCHESS(ダッチェス)」。復刻モデルではない。「新作のクラシック・モデル」なのだ。
Duchessとは、気品に満ちた女性を意味する言葉のようだ。このリールは、気品に溢れ品格と伝統を感じさせてくれる品というわけ。なんとも英国の老舗らしいコンセプト。

「THE DUCHESS」の刻印の周囲を囲むゴールドパーツや、リール外周を刻む鎖状の刻印、木製ハンドルなど、細部へのこだわりからも、その高い品位を感じとることができる。
英国・アニックの地で職人が手作りするこのリール。
フレームはバーストックアルミニウムから削りだされている。図太いアルミのかたまりを職人が機器を操作しながら一つ一つ削りだし、フレームに仕上げているのだ。これは、このリールが頑丈さと軽さの両方を兼ね備えていることを意味する。
クリックチェック機構は、つまみで調節できる。左巻き/右巻きの交換も極めて容易。ラインガードは、左右巻き両方に取り付けられている。
ルックスはクラシカルだが機能は先進的だ。
■新作バッグは「英国の伝統」×「日本の技」
もうひとつ沢内の渓に持ってきたハーディーの新作は、フィッシングバッグ。いかにも英国らしい品のいいデザインのショルダーバッグだが、実はこのバッグ日本製なのだという。
日本のバッグ職人が持つ技術のクオリティは世界的に見ても非常に高い。その中でもトップクラスの熟練職人が製作しているのが、このバッグというわけ。なんとも贅沢なフィッシングバッグなのである。

デザインのベースは、ハーディーが1930年代よりラインナップしてきたクラシック・フィッシングバッグ。これを現代の技術と素材で蘇らせたのが、このシリーズだ。
半世紀も前に製造されていた英国製バッグの風合いを最先端の技術と技で再現しつつ、現代のバッグとしてのクオリティも高いレベルで維持している。
生地、革、金具などの材料から、縫製、裁断、革の仕上げに至るまで、徹底的にこだわり抜いてつくられているのだそうだ。
コンセプトは、「英国の伝統」×「日本の技」。英国の老舗ブランド・ハーディーの伝統がにじみ出てくるようなクラシカルで優雅なデザイン。それを高いクオリティを誇る日本の技で再現したのが、このフィッシングバッグというわけだ。
■沢内のキャパシティ
取材は今年(2015年)の9月後半。禁漁が間近に迫っていたこともあり、平日にもかかわらず、沢内では何組もの釣り人を見かけた。フライマンとエサ釣り師が半々くらいだろうか。岩手県内の釣り人に加え、東京から遠征してきている方もいた。
それでも入渓ポイントに困ることはない。それだけのキャパシティが沢内にはあるのだ。魅力的な渓は近隣にいくつもある。
今回の釣行でも、ヤマメ中心ののどかな里川からイワナ中心の山深い山岳渓流まで、先行者のいないポイントをあちこち釣り歩くことができた。
■飽きない程度に釣れるイワナとヤマメ

9月も後半になると、渓魚の活性が高い日は少なくなる。産卵活動の季節に入ってくるからだろう。ヤマメもイワナも恋に忙しくなってくるというわけだ。
この日も渓魚の反応は良いほうではなかった。それでもさすがは沢内。グッドサイズこそ姿を見せてくれなかったが、20cm~25cmくらいのイワナ・ヤマメが飽きない程度に遊んでくれた。
水生昆虫のハッチや流下はあまり見られない。したがってティペットの先にはテレストリアル(陸生昆虫)系のドライフライを結ぶことが多かったのだが、イワナ・ヤマメともにフライに対してセレクティブな印象は感じない。大きさもカラーもシルエットも「これが当たり」というパターンはなく、どのフライパターンでもそれなりに渓魚の反応を得ることができた。
■写真映えするハーディー
それにしても、ハーディーの道具は写真映えする。
例えばイワナもヤマメもハーディーのリールと一緒に撮影することで、その美しさがずいぶんと引き立つ気がしている。

釣りをしているシーンの写真にしても、ハーディーのバッグが一緒に写っていることで、その印象はずいぶんとエレガントになる。
気品を感じさせる上品でクラシカルなハーディーのデザインが、なぜか日本の渓流の豊かな自然や、イワナやヤマメの美しい魚体にとても似合っているせいなのだろうと思う。
ハーディーの道具に対して憧れに近い感情を抱いている方は少なくないと思うが、こんなところもその理由のひとつなのかもしれない。