■WILD-1のエキスパートの釣行に同行

全国に18店舗のアウトドアショップを展開するWILD-1(ワイルドワン)。フライフィッシング用品の品揃えが充実している店舗が多いので、フライマンの間では馴染みが深いアウトドアショップだろう。
WILD-1の店舗で活躍するフィッシング部門のスタッフは、もちろん皆釣り好き。それはまあ当たり前かもしれない。
しかし、フィッシング部門の全員がフライロッドをキャスティングできるフライフィッシャーであるということには、驚かされた。ルアーが中心というスタッフもいるそうだが、フィッシング部門の全員が、自身もフライフィッシングを楽しんでいるというのは、客側としても、これは実に頼もしいことだ。
フライフィッシングで使われる道具は個性的なものが多い。自分でこの釣りをしている者でなければ、その道具について人に説明することは難しいだろう。WILD-1店舗のフィッシング部門スタッフであれは、気になる道具について尋ねた場合に的確な答えを期待できるというわけだ。
■人気の本流フィールド・犀川へ

今回は、そのWILD-1のエキスパート達の釣行を同行取材することができた。取材は2015年10月後半。紅葉が深まってきた長野県・犀川(さいがわ)での釣行だ。
犀川のフライフィッシング・フィールドは、犀川漁協が管轄する上流側と、犀川殖産漁協が管轄する下流側に分かれている。今回は、周年解禁(禁漁期間がない)ことで話題の下流側・犀川殖産漁協のエリアで、本流のフライフィッシングを楽しむことにした。
■パワフルなスーパートラウトが人気を呼ぶ
犀川殖産漁協管内の犀川本流はC&Rのレギュレーション。メインの対象魚はニジマスで、これにブラウントラウトが混じる。ここ犀川の最大の魅力は、ニジマス・ブラウントラウトともに魚体のコンディションの素晴らしさにある。

写真のトラウトは今回の釣行で釣ったニジマスだが、この魚もやはり美しい。スリムな魚体だが、図太い本流の流れに放されているためだろうか、筋肉質だ。
ニジマスは毎年しっかり放流されているが、ここはC&Rということもあって魚が残る。2年目、3年目のニジマスともなると、ネイティブといっても差し支えないほどの素晴らしい魚体に育つそうだ。

本州の河川でこれだけ素晴らしいコンディションのニジマスやブラウンに出会えるフィールドが他にあるだろうか。これを求めて多くの釣り人がここを訪れるのもうなずける。
ちなみに、ここで釣れてくるブラウントラウトは、犀川の源流のひとつである上高地の梓川で以前に放流されたものの末裔らしい。この水系に棲むブラウントラウトは天然魚なのだ。
本流で大型化した野性味溢れるネイティブなブラウントラウトを釣ることができるというのも、ここ犀川の魅力のひとつになっている。
■3人のエキスパート
今回この犀川の流れに挑んだのは、WILD-1の中でもとりわけツーハンドのフライフィッシングにのめりこんでいるという3名のエキスパート。
多摩ニュータウン店の角田さん。入間店の栗原さん。そしてWILD-1・フィッシングバイヤーの室井さん。
角田さん、栗原さんはシーズン中は中禅寺湖や芦ノ湖などの湖に通うことが多いそうだが、オフシーズンになると、ここ犀川に繰り出してくるのだという。1年を通して休むことなくフライフィッシングを楽しんでいるというわけだ。
■ハッチはあるものの

さてこの日の犀川のトラウト達はあまり機嫌が良くなかったようだ。思い思いのポイントでキャストする3人のツーハンドロッドにアタリは少ない。
地元のフライマンの話によれば、この時期としては水位が高めで、核心部となるポイントに近づくことができないのが痛いという。9月の台風の影響で上流部のダムがいまだに放水を続けていためだろうということだった。
トラウト達は季節的にもそろそろ産卵シーズンが近いはずで、その影響もあるのかもしれない。
午後になって穏やかな日差しに包まれると、小型のメイフライに混じって大型のメイフライのハッチが増えてきた。#10~#12ほどのメイフライ。

ヒラタカゲロウだろうか。このサイズのメイフライは、イブニングが近づくにつれ、かなりの量が乱舞していた。
しかしライズはあまり見られない。ドライフライの釣りと比べればライズの重要性は高くはないのだが、流れが広大なだけに、ライズはトラウトの着き場の大きな手掛かりとなる。
忘れた頃に、鮭ではないかと疑うほどの大型魚が大きな音を立てて派手なライズを見せることもあるが、この日はそれが続くことはなかった。
ライズの起こる場所も神出鬼没。傾向をつかむことはできない。
■異なる層を攻める3人

この日は3人がそれぞれ異なるタイプのシンキングラインを使用して、表層、中層、深層を釣り分けていた。
「その日のトラウトのいる層を、いち早く把握しようという作戦です」と角田さん。なるほど、3人で釣ることのメリットを最大限に活かそうというわけだ。
ロッドは角田さんが7/8番の14' 0”。
栗原さんは6番の12' 6”。
室井さんが8番の13' 11”。
メイフライのハッチが見られたこともあり、3人ともウェット中心のフライセレクトだが、フライボックスにはニンフやストリーマーも並ぶ。
「リードにニンフを結びドロッパーにシルバーマーチブラウンなどを使うことで、メイフライのハッチのステージを演出してみることもあります」と角田さん。深い層にニンフを流し、その上の層でイマージャーや溺れたダンなどを模したフライを流すというわけだ。3人のエキスパートは、この釣行でも様々な手法を試していた。
■浅瀬で出たニジマス
こうした試行錯誤の中で栗原さんがヒットさせたのが、写真のニジマス。
手前側の浅瀬。水の色が変るカケアガリのあたり。比較的ゆるやかな流速のポイントでヒットした。「トラウトは、こうしたカケアガリや沈み石周辺など、変化のある場所についていることが多いですよね」と栗原さん。
このニジマスが喰ったフライは、リードに結んでいたマーチブラウン。ニジマスはやはりメイフライを意識していたようだ。
■ブラウンは?

ところで、今回はグッドサイズのブラウントラウトに出会うことができなかった。途中から3番のスイッチロッドを使ったオーバーヘッドキャスティングに切り替えていた室井さんが、20cmそこそこの小型ブラウンをキャッチしただけ。
もともと犀川殖産漁協の管内では、ブラウントラウトの比率は高くない。放流しているわけでもない。ここで釣れるブラウンは、上流域から落ちてきた個体だけなのだ。
ちなみに上流側の犀川漁協の管内では、ブラウンの比率がこちらよりも高いのだそうだ。
■気になる道具たち
さて、今回の取材で筆者は、3人の使う道具にひそかに注目していた。
フライフィッシング用品の品揃えが豊富なWILD-1の店舗が職場のお三方。沢山のアイテムに囲まれるのが日常の彼らが、自分達の釣行で使う道具だ。関心を持たずにいられない。
この記事の最後に、今回の取材で特に気になったアイテムを紹介しておこう。