■秘境・信州遠山郷を流れる北又沢
長野県飯田市の遠山郷。秘境として知られる地で、「日本の秘境100選」のひとつにも数えられる谷間の里だ。
聖岳(3,013m)をはじめ、南アルプスの山々を水源とする遠山川沿いの谷に広がる里が、ここ遠山郷。

今回はその遠山郷の奥を流れる北又沢でのフライフィッシング。
北又沢は遠山川の一大支流。
南アルプス・大沢岳(2,820m)などを水源とする山岳渓流で、簡単に入渓できるのは最下流部のみだ。
北又沢が遠山川に流入する地点は「北又渡」と呼ばれているが、その北又渡から北又沢に沿って、林道がしばらく併走している。そこが、北又沢で楽にフライフィッシングを楽しめる区間だ。今回の入渓点はそこ。北又渡から北又沢を釣り上がるフライフィッシング。2017年夏の取材。
■「遠山アマゴ」の渓
遠山川本流はアマゴの銘川。ここの幅広アマゴは「遠山アマゴ」などと呼ばれ渓流釣りファンに人気だ。

簡単に釣れるわけではないが、尺を超える本流アマゴの存在も、遠山川が釣り人を魅了する理由のひとつだ。
この日入渓した北又沢の下流部もアマゴの渓で、清冽な流れの中にとても美しいアマゴが泳いでいる。
尺アマゴは難しいかもしれないが、幅広で魅惑的なボディラインをしたアマゴが多い。
今回のお目当ては、その美しいアマゴ。
今シーズン筆者が使っている、HARDY(ハーディー)のフライリール・Marquis LWT(マーキスLWT)と、遠山郷のアマゴとの記念撮影をしたかったのだ。

筆者は、マーキスLWTのREEL4(4番用)というタイプにDTの3番ラインを巻き、それを3番ロッドに装着して使用することが多い。
REEL2/3(2~3番用)を3番ロッドに装着した場合、筆者にはリールが小さく感じられてしまうからだ。
このあたりは好みの問題だが、3番ロッドにREEL4の大きさが筆者にちょうど好みのバランス、というわけだ。
もう少し言うと、マーキスに限らず、渓流で使うハーディーのリールはこのサイズが筆者の好みなのだ。ハーディーの存在感を感じることができる気がしている。
■天空の集落「下栗の里」
さて信州・遠山郷では、今も秘境の面影をあちこちで見ることができる。中でもとりわけ秘境感を感じることができる、遠山郷を代表するスポットが、写真の「下栗の里」だ。

急峻な斜面のわずかなスペースにつくられた、天空の集落。
メディアでも度々紹介されるので、多くの観光客がここを訪れる。
付近では縄文土器が見つかっていることから、この地には太古の昔から人々が暮らしていたと考えられているそうだ。
集落内に立って谷底をのぞきこんでみると、足がすくむような高さがある。深すぎて谷底は見えないが、そこには遠山川が流れている。
そして、その遠山川を少し上流にのぼったところに、北又沢は流れている。北又沢は「天空の集落」の奥にある渓なのだ。

北又沢へは、この下栗の里を通り抜ける林道を使ってアプローチすることになる。
舗装されてはいるものの、落石が多い。通行には注意が必要だ。
北又沢は透明度の高い清冽な流れ。森の緑と清らかな水のコントラストが美しい。
アマゴたちも美しい。魚影が濃いというわけではないが、アマゴたちはこの日もポツポツとドライフライに飛び出してくれ、その美貌を見せてくれた。
この渓ではフライマンは多くないのだろう。フライに対する反応はとても素直だ。
■モデルチェンジで生まれ変わった最新モデル
さて、今回の主役は美しいアマゴ。そしてハーディーだ。
フライフィッシング発祥の地とされる英国。その英国で1872年に産声をあげたハーディー。

1世紀以上もの間、世界中のフライフィッシャーに愛され続けている、フライフィッシングのトップブランド。老舗中の老舗だ。
この記事をご覧の皆様の中にも、ハーディーのフライリールやフライロッドを愛用している方は多いことだろう。
「マーキス」はハーディー・リールの中心モデルのひとつとして、世界中に多くのファンを持つロングセラーの銘品。
この釣行で使用した「マーキスLWT」は、昨年(2016年)11月にモデルチェンジして復活した最新モデルだ。
■英国の工場で削り出しで製造される
旧モデルと比べて、パッと見てもわかるのは質感の違い。一段とエレガントになった。

旧モデルでプラスティックだった一部部品が金属に変更され、フェイス面のリベットが金色になったことが、質感を上品にした。
「ハーディーらしさ」を感じさせるクラシカルで上質なデザインは、このリールが今後長年に渡って、銘品として君臨することを予感させる。
だが、変ったのはルックスだけではない。
製造過程の話だが、新マーキスはバーストック・アルミからの削り出しになった。ちなみに旧モデルは鋳物。
目に見えない部分だが新モデルのマーキスは強度も向上している、というわけだ。

バーストック・アルミとは、アルミ塊の図太い棒。これを英国のハーディーの工場で、職人が機械を操作しながら丹念に削りだしているのだ。
鋳造と違い製作に手間と時間がかかるが、強度は格段に高い。
バーストックの素材は、A6061というアルミ合金。船舶や車両、土木用材といった高強度が求められるものに使用される合金だ。
足元が岩場ということが多い渓流のフライフィッシングでは、落としたり、転倒したりで、リールを岩にぶつけてしまうことは珍しくない。そうした際にも割れてしまうことがない安心感が、バーストックA6061の削り出しにはある。
■軽量化も図られたマーキスLWT

新型マーキスでは軽量化も図られた。品名についている「LWT」は、「ライトウェイト」の略なのだ。
「軽量化する」ということは、今回のモデルチェンジでの大きなテーマだったということなのだろう。
ちなみに、この軽量化はスプールの穴あけを改良することで実現されている。
より頑丈になって軽量化もされ、一層使いやすくなったマーキス。
飽きのこない上品なデザインに仕上げられた「Made In England」のこのリールは、これから長年あちこちの渓で活躍してくれそうだ。