WILD-1スタッフと歩く飯豊連峰・秘密の源流|フライフィッシング データバンク

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WILD-1スタッフと歩く飯豊連峰・秘密の源流
(取材:2018年8月)

■魅力的な渓流が多い飯豊連峰

新潟県、福島県、山形県と三県にまたがる飯豊(いいで)連峰。
東北地方では数少ない2000m級の山々が連なる大山脈だ。
飯豊連峰の渓流でフライフィッシング
飯豊連峰には魅力的なフライフィッシング・フィールドも数多くある一方、険しくて生半可な装備や技術では立ち入ることのできない渓流も多い。
今回はその飯豊連峰の渓の源流域でのフライフィッシングだ。

今年も禁漁まで残り1ヶ月少々。
源流のイワナにもう一度会っておこう、という狙いだ。

取材は2018年8月下旬。
この地域の渓の夏は、アブの大群に行く手を阻まれることが多いのだが、幸いにもこの日は、フライフィッシングに支障が出るほどのアブに取り囲まれることはなかった。

■雑誌等でもおなじみ、WILD-1・曳地さんの釣行
WILD-1郡山店の曳地さん さて、この日はアウトドアショップとしておなじみのWILD-1(ワイルドワン)・フィッシング部門スタッフの釣行に同行させていただいた。
WILD-1・郡山店の曳地(ひきち)さん。雑誌などにも度々登場するフライフィッシングの名手だ。

WILD-1はアウトドアショップだが、フライフィッシングやルアー用品の品揃えも抜群で、フィッシング部門のスペースが広い店舗も多い。フライやルアーの専門店でも真似できないほどの品揃えの店舗もあって、本当に驚かされる。

各店舗には曳地さんのようなエキスパートも多く、ルアーが得意なスタッフでさえ、全員がフライロッドをきちんと振れるそうだ。
彼らの釣行回数にも取材のたびに驚かされるのだが、フィールドの状況を確認したり、新商品を試してみたりの繰り返しで、実体験に裏打ちされた知識と情報を手に入れているわけだ。

常連のお客さんには秘密のフィールドをガイドしてくれることもあるそうなので、この記事をご覧の皆様も常連になれば、とてもお得なことがあるかもしれない。
源流のフライフィッシング
■尺イワナの秘密の源流
さて今回の渓は、実は曳地さんの秘密のフィールド。「覚えている限り、ここで尺イワナが釣れなかったことはない」という、とっておきの源流だ。
飯豊連峰の渓流で尺イワナを狙う曳地さんがここを秘密にしているのは、単に大物が釣れるからといった理由ではない。アクセスの林道が険しいのだ。安易な気持ちでのアクセスは危険というわけだ。

今回は曳地さんの四輪駆動の車でアクセスした。「この林道専用に使っている車」という。一般的な乗用車ではスタックの恐れがある。パンクも怖い。携帯電話の通じない山奥でスタックというのは考えただけでも恐ろしい。

また、この渓、入退渓のポイントもわかりづらい。なんとか川に降りられても、退渓点を見つけられなければ、遭難すら覚悟しなければならない。
「あそこは釣れますよ」と気軽に教えるわけにはいかないのだ。

■熱中症?のイワナたち
熱中症?のイワナ さて、今回はとんでもない猛暑日に当たってしまった。近隣の新潟県胎内市で40度超。福島県会津若松市が39度。外気は風呂の温度。流れに手を突っ込むと生ぬるい。水温も20度前後はありそうだ。

さらに大渇水。これではイワナにとっても生命の危険が迫る状況だろう。

釣行中、曳地さんが岩陰にイワナの姿を見つけた。水中にカメラを入れても逃げない。4匹確認できる。写真中①のイワナはなかなかのサイズだ。
熱中症にでもかかったかのように、皆グッタリして動かない。この日のイワナたちの多くは、こんな場所に避難してしまっているようだ。

曳地さんの釣行では毎度感心してしまうのだが、とにかく渓魚をよく見つける。「川底と色の違う長いものを見つけるんです。それが動けば渓魚ですよ。」と言うのだが、やはり筆者はこの日も自分でイワナを見つけることはできなかった。
源流イワナを釣る
■巻き返しのテクニック
フライフィッシングにはあまりに厳しい状況だが、それでも曳地さんはこの日、2匹のイワナを手にした。
本人は「今日はダメだった、ダメだった」と言うのだが、関東の渓ならまずまずのサイズ。どうやら曳地さんは、この渓では尺イワナでなければ納得できない様子だ。
巻き返しをスネークロールでピックアップ それにしても、この条件でドライフライでイワナを釣り上げるのだから恐れ入る。

このうち1匹は巻き返しのポイントから出てきたのだが、巻き返しに落としたフライをピックアップする際の曳地さんのテクニックが気になった。
フライが水面をギューっと滑ったり、ビシャっと飛沫があがったりしない。スッと静かにピックアップさせている。

下流側に流されたラインを上流側にロールさせてからピックアップしているようだ。
「スネークロール風に大きくメンディングを入れるんです」と曳地さん。
水面を荒らすと、その都度大物をキャッチするチャンスが減る。静かにピックアップすることで、次のキャストにチャンスをつなぐことができるわけだが、強い流れの向こうの反転流をメンディングするというのは、そう簡単なことではない。
このテクニックは動画中で詳しく解説していただいているので、ご覧いただければと思う。
飯豊連峰の渓流でイワナがヒット
■源流のランチタイム
さて、WILD-1スタッフとの釣行ではすっかり恒例となっているが、曳地さんは今回も河原でおいしいランチをご馳走してくださった。この取材の楽しみのひとつでもある。
源流ランチの準備
手際よく準備を整える曳地さん。
アウトドアショップのスタッフなので当たり前かもしれないが、道具類の取り扱いも手馴れたもの。
こうして現場で自分で使っているからこそ、信頼できる商品知識が身につくのだろう。

今回は源流釣行で歩きの多いフライフィッシング。なので食材も道具類もコンパクトでかさばらず、軽量なものが選ばれている。

食材は軽量なフリーズドライ製品。バーナーも驚くほどコンパクトに収納できるタイプ。
携帯浄水器も小さくて軽い。浄水器を持参することで渓の水を調理に使える。これなら重たい水を持ち歩かなくて済むわけだ。

ところで、WILD-1スタッフの釣行取材で毎回紹介している道具類は、基本的にスタッフ個人の所有物。ご自身が実際に使っている道具を紹介している。
お気づきの方もいるかもしれないが、この浄水器やバーナーは毎回のように記事中に登場する。
飯豊連峰の源流でアウトドア・ランチ
ということは、それだけスタッフの間でよく使用されている製品ということだ。関心のある方は店舗でスタッフに聞いてみるとよいだろう。
バーナーはMiniMo(JETBOIL)。浄水器はミニSP128(SAW YER)だ。

さて、この日のランチメニューは、きのこのパスタとブロッコリーのパスタ。
きのこのパスタは袋にお湯を注ぐだけで完成してしまう。ブロッコリーのパスタは煮込むタイプ。

両方ともフリーズドライなのだが、これが本当に旨い。
イタリアンレストランでこれが出されても、おそらく筆者は気づかないだろう。「やっぱり本物は旨いねぇ」などと言ってしまいそうだ。
最近のフリーズドライ食品はあなどれないのだ。
特にこの日は、猛暑の中で歩く釣り。汗をかいて塩分を失っている。パスタの塩気がとても有難い。それにしても源流の森の中でいただく温かな食事はやはり格別だ。
飯豊連峰の源流でフライロッドを振る
さて、今回曳地さんが使っている道具はどんなものだろう。フライフィッシングの道具については見る目が肥えているWILD-1のスタッフが使う道具。今回もいくつか教えていただこう。

■スプレータイプのフロータント
WILD-1×Kty ドライトニック・スプレー WILD-1とKtyがコラボして開発されたスプレータイプのフロータント。
開発には曳地さんも携わったそうだ。

WILD-1とKtyのコラボ・フロータントはリキッドタイプのものが以前からラインナップされていたが、今年新たにスプレータイプが登場した。

スプレータイプを開発したわけは?、とお聞きすると「便利だから」との答えが返ってきた。
そう、ドライフライの釣り上がりのシーンでは、スプレータイプのパウダーフロータントはとても使い勝手がいいのだ。手返しがいい。軽い。ベストの中でこぼれたりしない。
動画中で使い方を詳しく解説していただいたので、ご覧いただきたい。

■尺イワナに狙いを定めたパックロッド
WILD-1×カムパネラ ストリームトレッキング スペシャル WILD-1とカムパネラがコラボして開発されたフライロッド。7’5”#3。6ピース。源流イワナを狙うのにぴったりのパックロッド。
こちらも曳地さんが開発に携わったそうだ。

6ピースに分解してしまえばベストの後ろポケットにも収納できてしまう寸法。歩きの多い源流でこれは助かる。

開発コンセプトなどをお聞きすると、源流の尺イワナを狙うロッドを作る、という曳地さんの思いが詰まったような製品のようだ。

バット部分を強めにしたトルクのあるロッドだそうで、源流で頻繁に使う#8や#10といった大型テレストリアルを難なく飛ばせるパワーを持つ。
この強いバットは、不意にかかった大物にも負けないという。

一方でティップ部分は繊細。
プールに浮いている尺イワナをミッジで狙うといったシーン、ティペットも細いものを使うことになるが、細いティペットでもアワセ切れしない「しなやかさ」をティップ部分に持たせた、ということだそうだ。

ターン性能の高さもこのロッドの特徴。実際この日は強めの風が吹いていたのだが、曳地さんのキャスティングが描くターンは全くそれを感じさせなかった。

ちなみに装着されているリールは、WILD-1限定復刻版のハーディー・ゴールデン・フェザーウエイト。
リーダーは14フィートの5x。ティペットは5xを5フィートほど。
ウェーダーは着用せず、ゲーターを使ったストリームトレッキングのスタイルで軽快に渓を釣り上がっていた。
飯豊連峰の源流を釣る
(掲載日:2018年8月)

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