富山県・立山川|フライフィッシング紀行

フライフィッシング データバンク
フライフィシング紀行・富山県・立山川
(取材:2018年8月)

■富山のシンボル・立山の名を冠した渓

立山連峰・剣岳といえば北アルプスの山の中でも主役級の人気を誇る名峰だ。
国土地理院の地図によれば標高2999mとされている。万年雪の雪渓も多く、そのうちいくつかは国内では数少ない現存氷河なのだという。
早月川から剣岳を望む その剣岳周辺を水源とする渓流が今回釣行した立山川だ。富山湾に注ぐ単独河川・早月川の源流域にあたる。

早月川は日本屈指の急流とされ、わずか27kmの流程で高低差3000m近くを一気に流れ落ちる。
したがって、その源流域である立山川は落差の大きい流れ。大岩がゴロゴロ転がる中を流れるダイナミックな渓流だ。

立山といえば富山県のシンボル的な存在。能登半島から富山湾越しに見る立山の姿はあまりに有名だ。
その立山の名を冠した立山川。魅力的な名前のこの渓を、いつか釣りたいと以前から考えていたのだが、ようやく今回その願いがかなうフライフィッシングとなった。

■剣岳から流れる渓の天然イワナ
立山川の天然イワナ この立山川を含め早月川の水系には漁業権が設定されていない。管轄する漁協がないのだ。

ご存知の方も多いと思うが、富山県には管轄漁協のない川が多い。なにしろどの街からでも富山湾まですぐ近く。「釣りをするなら海でしょ」というのが、富山県民の釣りに対する一般的な考えなのだろう。

したがって早月川の水系にはイワナもヤマメも放流されていない。
立山川の隣を流れる白萩川には、ずいぶん前に個人的にイワナを放流した人がいたそうだが、近年は早月川本流にも支流にも渓魚の放流はされていないという。
つまりここで釣れるイワナは全て天然魚というわけだ。
名峰・剣岳から流れる渓のネイティブなイワナを釣るフライフィッシング。これも立山川に惹かれた理由のひとつだ。
立山川のフライフィッシング
■少ない水量。高い透明度。イワナの警戒心は高い。
立山川は馬場島(バンバジマ)で白萩川と合流し、そこから下流は早月川と名を変える。その白萩川も水源は剣岳周辺で、立山川とは兄弟のような渓流だ。
立山川・馬場島付近でフライフィッシング
さて、この日入渓したのは、立山川沿いを走る林道が川を渡る橋の付近。この川の核心部よりも少し下流だ。ここは車で乗り付けることができるので入退渓が楽。核心部はここから先1kmほどの場所にある取水堰堤より上流側だ。

実はこの日は午後から天気が崩れる予報で、豪雨すら心配される。そのため、上流の核心部に行くのをためらったというわけだ。立山川は急流なので、降雨があればおそらくあっという間に増水する。

入渓した区間は上流で取水されているので水量が乏しい。おまけに透明度がとても高い。イワナの警戒心は高く、フライフィッシングにはあまり都合のよくない条件だ。

■イワナの棲息には過酷な環境
立山川でイワナがヒットところでこの立山川。そもそも魚影の濃い川ではない。
多くの期間を深い雪に閉ざされてしまう北アルプスの急流。雪渓から滴る水が水源だけに水温も低く、エサとなる水生昆虫もあまり多くない。イワナの棲息には過酷な環境なのだ。前述のとおり、放流もされていない。

もしここでフライフィッシングを楽しもうと思うなら、シビアな条件は始めから覚悟しておいたほうがよいだろう。この日も、流れの中をジャブジャブ歩いても走る魚影を見ることはなかった。

真夏の晴れた日。日陰のない開けた渓。取水で水量の少ない透明度の高い流れ。この条件ではヒラキに出てくるイワナはそうそうはいない。
岩の後ろなどにできたちょっとした陰。そうしたポイントからのみ、イワナはドライフライに飛び出してきた。
立山川でフライロッドを振る
■堰堤下にたまっていたイワナたち
流れの中から顔を出したイワナはこの日は2匹だけ。どちらも20cm少々で小ぶりだった。だが、堰堤下にできたプールでは良型のイワナがドライフライに飛び出してくれた。
イワナがたまっていた立山川の堰堤
水量の少ないこの区間では数少ない深場。堰堤によってできた大きな影。大きな石も入っていてイワナはそこに身を隠すこともできる。流れ落ちる水によってできた白泡で酸素濃度も高そうだ。
こういう場所ならグッドサイズのイワナも落ち着いて行動できるのだろう。

この堰堤下では27cmほどのイワナ2匹、20cm少々の小型イワナ3匹と対面した。どうやら遡上してきたイワナたちがここに溜まっているようだ。
粘ればさらに多くのイワナを手にすることもできるのだろうが、何しろ天気が心配。午後は豪雨の予報だ。

ところで立山川は釣り人が少ない。魚影が薄いためだろう。この日はお盆期間中だったが見かけた釣り人は1組だけ。その1組は上流の核心部を目指していった。
そんなこともあって、ここのイワナたちはフライに対してとても素直に反応してくれる。
立山川の良型イワナを釣り上げる フライセレクトにも気を使わずに済む。目立ったのは、大き目のフライを食い損なってフッキングしないケースが多いこと。大型の昆虫は食い慣れていないのかもしれない。
真夏のフライフィッシングとしては小さめの#16が、この日最も活躍してくれた。

■精悍なイワナ
下の写真がこの堰堤下で釣れたイワナ。27cmほどのサイズ。やはりエサが多くないのだろう。少しやせた魚体。
だが貧相な印象というわけではない。筋肉質の引き締まったボディー。頭が小さく顔つきは精悍だ。
北アルプスの雪解け水。特に雪代のシーズンはここ立山川も荒々しい激流となる。その激流がこのような精悍なイワナを育てるのだろう。
精悍な立山川のイワナ
(掲載日:2018年8月)

富山県・立山川のフライフィッシング動画

立山川フライフィッシング・ポイントの地図