
雪代の入らないフィールドでは、5月はいよいよ渓流フライフィッシングの盛期。様々な種類のメイフライ(カゲロウ)にカディス(トビゲラ)も混じって、水生昆虫のハッチ(羽化)が賑やかになる季節だ。
4月までは、ライズを探し歩くマッチングザハッチのフライフィッシングが中心だが、5月に入るとブラインドでの釣り上がりのフライフィッシングも楽しめるフィールドが多くなる。GWが終わる頃になると、標高の高い渓流や季節の進行が遅い地方を除けば、フィールドには新緑も溢れてくる。
渓に立つだけでも爽快な気分を味わうことができる素敵な季節だ。
■初夏にハッチする比較的大型のメイフライ
そんな初夏の渓でハッチする、比較的大型のメイフライがクロマダラカゲロウ。この時期、イワナやヤマメに好んで捕食される、フライフィッシングではおなじみの種だ

フックサイズにして#10~#14くらい。
4月までは#18や#20といった小さなフライパターンを使うケースが多かったので、大きなフライを使える季節の到来は毎年ウキウキしてしまう。
赤茶系のボディーカラーが特徴的で、地域にもよるが5月~6月に集中したハッチが起こることが多い。
今回取り上げるのは、このクロマダラカゲロウのダン(亜成虫)パターンだ。
スタイルとしてはソラックスダンのパターンになる。
このパターンは、オオクママダラカゲロウにもマッチする。クロマダラカゲロウと外見がよく似てサイズ感もほぼ同じ種だ。ハッチが集中する時期は、オオクママダラカゲロウのほうがクロマダラカゲロウより少し早い。桜が咲く頃がオオクママダラで、桜が散ってからがクロマダラというイメージになるだろう。
■ライズ狙いにも釣り上がりにも

今回のパターンの便利なところは、ライズ狙いにも釣り上がりのブラインドのフライフィッシングにも使える点にある。
クロマダラのハッチは朝から日中にかけてが多い。その時間帯にもしクロマダラを見つけたら、特にライズが見当たらなくても、パイロットフライとしてこのパターンを結んでみるとよいだろう。
また、この時期には運がよければ、クロマダラカゲロウの集中ハッチに出くわすことができる。いわゆる「スーパーハッチ」というヤツだ。
そうなれば、それに伴って「スーパーライズ」が起こる可能性が高まるのだが、そのケースのライズは、難易度が高くないことが多い。ほとんどの場合、今回のパターンで難なく仕留めることができるはずだ。
余談になるが、この時期はクロマダラカゲロウの時間帯の後、イブニングでオオマダラカゲロウがハッチすることがある。こちらも大型のメイフライだが、体色がクロマダラと違って黄色系だ。
このケースに対応するため、今回のパターンのボディをイエロー系にしたフライも用意しておくとよいかもしれない。
■ターキーバイオットのクイルボディ
このパターンのボディは、ターキーバイオットを用いてクイルボディに仕上げている。ターキーバイオットには様々なカラーが用意されているが、このパターンでは赤茶系のものを使った。
グースバイオットを使用しても同様の仕上がりになるが、グースバイオットの場合、ファイバーが短いので、#12くらいの大きなフックサイズになるとタイイングが難しくなる。今回のような大き目のフライパターンではターキーバイオットのほうが巻きやすい。
テールは3本取り付けている。マテリアルにはバーサテールのブラウンを使った。
クロマダラカゲロウのダンのテールは3本なのでこのようにしたが、イワナもヤマメも捕食する際、テールの数は数えないと思うので、2本にしてタイイングしても差し支えない。
■ウイングにはディアヘア
ウイング部分に使用したマテリアルは、ディアヘア。
この部分は、視認性を重視するなら鮮やかな色合いのポリウイングを。イミテート性を重視するならCDCを使うほうががよい。ディアヘアはその中間くらいということになるだろうか。
ディアヘアのウイングにする場合は、視認性、浮力、イミテート性、ともに「そこそこ」という感じになり、瀬の釣り上がりにもプールのライズ狙いにも使用可能な汎用性の高いフライパターンに仕上がる。
ディアヘアのカラーは、ナチュラル、ブリーチいずれを使っても良いだろう。
ソラックス部分には、フェザントテイルを使ってみた。この部分にはダビング材を使用するのが一般的だと思うが、フェザントテイルを使うとタイイングの手間が少し省ける。
写真のパターンで使用したフックは、AXISCOのAFB305。スタンダードなシルエットで汎用性の高いフライフック。極端な細軸ではない。
クロマダラを意識したフライパターンでは、ボディの細さにさほどこだわる必要を感じないので、このあたりのフックが使いやすいだろう。
(掲載日:2015年05月05日)