
前回に引き続きアント・パターンのドライフライ。今回紹介するのは、スペントウイングのフライパターンだ。
実際にはこんな風貌のアリは存在しないと思うのだが、何故かこのフライ、渓魚の反応が良い。イワナもヤマメも、このフライパターンがお好きのようだ。
今シーズンもすでに何度かこのフライを試しているが、人気渓流のスレた渓魚も、釣り人の少ない穴場的なフィールドのウブな渓魚も、このフライでよく釣れている。
ウブな魚は他のフライでも釣れるのだが、他のフライには渋い反応を見せるスレたヤツがしっかりフッキングしてくれるのは、ありがたい。
■好反応の理由

反応が良い理由は、おそらくこのシルエットにある。
夏から秋にかけてのテレストリアル・シーズン。この時期にスペントタイプのフライパターンを流すフライマンは少ない。つまりイワナもヤマメも夏は、スペントタイプのドライフライを目にしていないのだ。
フライマンがこの季節によく使うパラシュート・タイプのフライには渋い反応を見せる渓魚も、スペント・パターンのシルエットに対する警戒心は薄いのではないだろうか。
■アント・パターンということにしているが

アント・パターンということにしてはいるが、渓魚はこのフライを「羽アリだ!」と思って喰いつくのではないと思っている。「黒っぽい羽虫が流れてきた!」という感じではないだろうか。
どうしても実在の虫に照らし合わせようとするなら、アリよりも、黒っぽい地蜂のほうが近いかもしれない。
いずれにしても、夏のフライフィッシングでは、イワナもヤマメも特定の虫を偏食していることは少ない。喰えそうなものは何でも喰っているのが、この季節だ。
警戒心を持たせず「喰えそう」「旨そう」と思わせることが、この時期のフライフィッシングでは重要というわけだ。
■スペント・ウイングはレジ袋でつくる

今回のフライパターンで、スペントウイングとして使った素材はレジ袋。コンビニやスーパーなどでもらえるヤツだ。半透明のものを適当にカットして使う。この素材は、ちぎれにくいので整形しやすく、扱いやすい。
このウイングが水面にペタリと張り付くわけだが、このレジ袋ウイング、なかなかに浮力が高い。山岳渓流の荒っぽい水面で使うことの多いフライパターンなので、これは助かる。
ところで、レジ袋は全く空気を通さない。キャスト時の空気抵抗が気になるところだが、無風の日であれば、これは問題にはならなかった。
■なまめかしいボディライン
このフライパターンでは、くびれたボディの曲線も特徴的だ。
フック(がまかつC-15B)の曲線をそのまま活かしたものだが、これがなんとも虫っぽいシルエット。アリやハチのなまめかしいボディラインの雰囲気をかもしだしてくれる。
お尻部分に巻いているマテリアルは、シマザキ・ストレッチボディ。
この部分は前回(2016年7月 今月の一本「フェザントテール・ムネアカ」)同様にフェザントテールにしてもよいが、フェザントテールはちぎれやすい。イワナに喰いつかれると、1回でフライが壊れてしまうこともある。

一方、シマザキ・ストレッチボディは耐久性が高い。壊れにくいフライをタイイングできるのがありがたい。
真っ黒に仕上がるところもいい。フェザントテールの色合いや質感とは異なるパターンに仕上げることができる。
ハックルはコックネック。これも黒を使っている。
このパターンではハックルに浮力は求めていないので、はらりと巻く程度にする。イメージしているのは、アリやハチのレッグだ。
よく釣れて、浮力も高く視認性も良い今回のフライパターン。
夏から秋にかけてのフライフィッシングで、ティペットに結びたくなる「夏の秘密兵器」的なドライフライだ。
(掲載日:2016年08月22日)