今回とりあげるのは、ハチ(ビー)やアブをイミテートしたテレストリアル系のドライフライ。
ハチやアブは夏から秋にかけての渓流では、最も目に付きやすい昆虫のひとつではないだろうか。
特にアブは、駐車スペースに車を停めたとたんにどこからか現われ、あっという間に車が取り囲まれ、車外に出るには勇気を要するような事態となることがある。北陸では、8月中旬ごろにアブが大発生する渓が多く、アブは「オロロ」と呼ばれている。何十匹ものアブの大群にまとわりつかれて、人はオロオロするばかり、ということでこの名がついたらしい。
渓流でのアブは釣り人には、あまり歓迎されていない昆虫だ。
そんなアブだが、流れに落ちた個体はイワナやヤマメの捕食対象になる。実際、この季節の渓魚のストマックには、ハチやアブが入っていることは少なくない。フライフィッシングの視点でアブを見れば、憎くきアブも別な見え方がしてくるというわけだ。
9月に実績のあるパターン
今回紹介するパターンに限らず、ビー(ハチ)のフライパターンは、特に8月下旬から9月にかけて、渓魚の反応が良い気がしている。
アブが大量に発生した少し後の時期ということになる。もっとも、アブが大発生する渓には8月中旬には入らないので、もしかしたらその頃から好反応なのかもしれない。
そう考えると、8~9月にビー(ハチ)のパターンに反応するイワナやヤマメは、ハチというより、アブにマッチしている可能性が高い気がする。
渓で飛び交っている個体数で考えても、ハチよりもアブのほうが圧倒的に多いだろう。
釣り人には嫌われ者のアブだが、9月のフライフィッシングでは意外に大事なテレストリアルなのかもしれない。
黒いシマシマ部分はフェザントテール
今回のパターンは、ボディの黄色い部分をフロス。黒いシマシマ部分にはフェザントテールを使ってタイイングしている。
フロスは黄色というより、オレンジ色に近い色合いのものを選ぶと良い。アブのボディは黄色よりもオレンジ色に近いためだ。フェザントテールは濃い茶系のものを使う。
先にフェザントテールをフックに巻きつけておいて、その上から縞模様がでるように隙間をあけてフロスを巻く。
ウイングにはナチュラルのCDCを使っている。この部分はイミテート性を高めると同時に浮力を補強するためのものだ。視認性を補うものではないので、カラーはナチュラルのものを使うのが良い。
パラシュートのポスト(インジケーター)は、パラダンなどと比べると、少しアイ寄り(前方)につけるとバランスが良くなる。ハックルはブラウンでも良いが、やはり黒が似合う。
ボディ部は濡らして沈める
さてこのフライパターンは、ボディ部分を水面下に沈めるようにして使うと、より渓魚の反応が良くなる。キャストする前にボディ部分だけ濡らしておく。
こうすることで、水面での姿勢が安定するのだ。フッキング率も格段にアップする。
パラダンなどと比べボディが太いので、ボディ全体をぽっかり浮かせると姿勢が斜めになってしまうのだ。
写真を見てわかるとおり、乾いた状態と比べると黄色い部分の色合いも、濡らしたほうがリアルな印象になる。
さて、このフライは今年もすでに大活躍してくれている。
8月後半に出掛けた南アルプスの渓。イワナとアマゴが混生する山岳渓流だったが、尺に少し足りないアマゴを筆頭に、次々とイワナとアマゴがこのフライパターンに飛びついてきた。
(掲載日:2014年09月07日)